歯の根の治療ってどんな治療?! 前編
2024年12月27日
虫歯が悪化してしまい、歯の内部の神経まで達すると、神経に及んだ虫歯は激しい痛みをともないます。そして、そのままにしておくと、歯を失うことになってしまいます。
そんな時、歯を残すために必要になるのは「歯の根の治療」。
歯にとって「歯の根の治療」は心臓病の手術並みの大手術なのです。
今回は「歯の根の治療」についてご紹介させていただきます。
歯の根の治療について知りましょう。
虫歯が痛くて歯科医院を受診すると「神経まで虫歯が達している」と診断をうけてしまいました。さて、どんな治療をするのでしょうか?そして、治療を受ければ治るのでしょうか?
一般的には、単に「歯の神経を取る」というイメージのある歯の根の治療。
でも、正確には、「細菌感染を起こした部分を除去する」治療なのです。
歯の内部には、神経があり、それが通る管を「根管」と呼びます。
歯の神経に虫歯が及んでいるというのは、根管内の神経が細菌感染を起こしている状態です。(正確には、歯髄=(神経と血管)が細菌感染を起こしています。今回はわかりやすく「神経」と記載させていただきます。)
細菌が虫歯の穴から入り込む以外にも、歯ぎしりなどの過剰な噛む力や転んだ、ぶつけた等の外傷により歯に亀裂が生じ、細菌が神経に入り込んで、感染を起こすことがあります。
ズキズキするような非常に強い痛みは、細菌が起こす炎症と炎症によってできた根の先の膿が原因です。
歯の根の治療は、「歯の内部の細菌感染を起こした部分を綺麗に取り除く」治療です。
根管の中を掃除するため、「根管治療」とも言います。
取り除いた後は、細菌を再び入り込ませないように、削った隙間を埋めます。
感染した部分がなくなれば、痛みもなくなっていきます。
とはいえ、感染部分を綺麗に取り除くのは非常に難易度が高いです。
根管は1mm以下と非常に小さく、形も複雑です。
しかも相手は数㎛(マイクロメートル)というミクロの細菌です。
取り切れていないと、また繁殖して感染を起こします。
歯科治療の中でももっとも難しい治療のひとつとされています。
治療を受けられる際には、ご理解いただければと思います。
治療の流れ スタートからエンドまで!
一筋縄ではいかない歯の根の治療。では、次はどのような流れで治療が進むのか、ステップごとに見ていきましょう。
STEP1 治療前 ~痛みは神経の断末魔?!~
*細菌の感染(=虫歯)がエナメル質と象牙質をこえて、歯の神経にまで及んでいます。
*歯の根の先には、膿が溜まっています。
まずは、STEP1の「治療前」の状態を見ていきましょう。
虫歯がエナメル質から象牙質に広がり、細菌が神経にまで入り込んでしまいました。
感染したことで神経に炎症が起き、根の先に膿が溜まっています。
歯の根の虫歯は非常に強い痛みを生じます。
痛みの原因は2つあり、1つは「神経が死ぬ時の痛み」。神経が細菌感染を起こして死んでいく時に痛みが生じます。
もう1つは、「膿が顎の骨を圧迫する痛み」。歯の根の虫歯が進行すると、細菌が体内に入り込まないように、根の先が細菌と免疫の戦場となります。
細菌と免疫の死骸は膿になります。その膿が膨らんでくると、顎の骨の中で圧迫痛を生じます。
虫歯のこれ以上の悪化を防ぎ、痛みを無くすには、根管の中から細菌を取り除かなければなりません。
STEP2 感染部分の除去 ~根管内を掃除する~
*歯の内部の、細菌に感染した部分を削り取ります。
*細かい根管内の感染部分を除去するには、ファイルやリーマーという、先端がドリル状になった器具を用います。
次に、STEP2の「感染部分の除去」の状態を見ていきましょう。
細菌を取り除くには、細菌感染した部分を綺麗に取り除かなくてはいけません。
エナメル質や象牙質の感染部分(=虫歯)を削ったら、根管内の感染部分(=死んだ神経)を除
去します。
ファイルやリーマーという、待ち針のような器具を根管に挿し込んで、少しずつ削り取って
いきます。
目では根管の中は見えません。歯科医師は歯の解剖学的知識とレントゲン写真などを手が
かりに、指先に全神経を集中して治療を進めます。
器具の先端で細かい根管の位置を確かめ、感染部分を削っていきます。
器具を挿し込む時に角度的に邪魔になるようなら、虫歯になっていないエナメル質や象牙
質も削ります。「え、健康なところも削るの?」と思われるかもしれません。しかし、もし
そこを削らないせいで器具が十分に届かず、感染部分が綺麗に除去できないとなると、治療
の成功はまずありません。
命にかかわる心臓病の手術をするのに、「胸に傷がつくから嫌だ」と言う人はいませんよね。
ご理解いただけると幸いです。
STEP3 洗浄と消毒 ~細かい汚れを洗い流す~
*感染部分を除去したときの削りかすなどを、消毒液で洗い流します。
*根管ごとに何回か繰り返します。
次に、STEP3の「洗浄と消毒」の状態を見ていきましょう。
リーマーやファイルは、非常に細かい器具とはいえ、根管の形状は複雑なため、中の感染部
分を100%取り切ることは不可能です。(側枝には器具自体が入りません)
それに、感染部分を除去する際に、細かい削りカスが出ます。
実は、この削りカスは細菌の塊なのです。
そのためこの削りカスはしっかりと取り除かなければなりません。
そのために、器具では届かない部分の細菌を可能な限り減らすためにステップ3の「洗浄
と消毒」が必要となります。
注射器状の器具で、消毒液を根管内に行き渡らせます。根管毎に4回~5回繰り返し行い、
汚れが浮いてこなくなるまで行います。
STEP4 仮詰め ~ここで受診を辞めないで下さい!~
*洗浄した根管内に消毒液を詰め、仮詰め(仮封)をします。
*仮詰めは2週間もすると劣化したり外れてしまいます。劣化したり、外れると根管の中に再び細菌が入り込んで治療が台無しになってしまいますので、受診の先延ばしはやめましょう。
次に、STEP4の「仮詰め」の状態を見ていきましょう。
根管内を洗浄したら、隙間に消毒薬を詰めて「仮詰め(仮封)」を行います。
このSTEP4を飛ばし、洗浄からすぐに次のステップである「根管充填」を行うことも
あります。
ただ、根管の本数が多い場合や、根管の形状が複雑な場合は、治療時間が長時間になり患者
様に体力的な負担がかかります。
そうした時は、一度仮詰めをして、「治療の続きは次回に」となります。
ここで是非、お伝えしておきたいのが、仮詰めはあくまでも「仮」だということです。
歯の根の先に膿ができていない場合、この時には痛みの原因である炎症した神経が除去
されているため、痛みは治まっています。
その為、「痛みが落ち着いてきたし、次の受診はキャンセルしようかな」なんて思われる患
者様もいるのですが、それは絶対にお辞めください。
仮詰めがもつのは入れてからせいぜい2週間程度となり、長持ちするものではありません。
もし、仮詰めが外れたり劣化したりすると、再び細菌が根管の中に入り込んで、治療が台無
しになってしまいます。
必ず次の受診(たいてい約1週間後)にはご来院ください。
まとめ
いかかでしたでしょうか?
今回は治療前~仮詰めまでの流れをご紹介させていただきました。
後半は根管充填~治療終了までをご紹介させていただきます。
是非、後半もあわせてよんでみてくださいね。