歯の根の治療ってどんなもの? 後編
2025年1月3日
今回も、前編に引き続き「歯の根の治療」についてご紹介させていただきます。
前編では、「治療前」と「感染部分の除去」と「洗浄と消毒」と「仮詰め」のSTEP1~STEP4まででしたので後編では「根管充填」と「治療終了」のSTEP5~STEP6についてご紹介させていただきます。
まだ、前編を読んでいない方は是非、前編も読んでみてくださいね。
治療の流れ スタートからエンドまで!
STEP5 根管充填 ~残った細菌を生き埋めにします~
*根管内を隙間なく埋めることで、細菌の活動を封じ込めます。側枝に残った細菌も
生き埋めになります。
*シーラーという充填剤を、ゴムのスティック(ガッタパーチャ)を用いて詰めていき
ます。
STEP5の「根管充填」の状態を見ていきましょう。
根管内を埋める処置を行います。仮詰めを外し、根管内の消毒薬を洗浄します。
そして、根管内を乾燥させてからシーラーという充填剤を注ぎ、ガッタパーチャを更に挿し込みます。
処置を行う時に空気が根管内に入りやすいので、液状のシーラーを注ぐだけでは奥まで入りません。
ガッタパーチャを更に挿し込むことで、余計な空気が押し出された状態でシーラーが入り込みます。
この処置は、内部を埋めて強度をもたせるため・・・・ではなく、根管内や側枝に除去できずに残った細菌を封じ込めることと、外から新たに細菌が入ってくるのを防ぐことが目的となります。
STEP6 治療終了 ~最終の被せ物を入れて~
*根管の充填が終わったら、再度仮詰めかまたは歯を整形して、仮歯を装着します。
*仮詰め又は仮歯を外して、最終の被せ物をいれます。
*仮歯が劣化したり外れたりすると、再び根管内に細菌が入り込んで治療が台無しにな
ってしまいます。受診の先延ばしはお控えください。
STEP6の「治療終了」を見ていきましょう。
根管充填が済んだら、レジンなどで上に土台を整形し、仮歯を入れます。
最終の被せ物が出来上がるまでは、これで過ごしていただきます。
ここまで来たら、治療終了まであと一息です。
この時に気をつけていただきたいのが、仮歯はあくまでも「仮」の存在です。
仮歯で噛めるようになったので治療を先延ばしにしてはいけません。
そして、仮歯の耐久性は、最終の被せ物よりもずっと低いです。
外れたり劣化したら、根管の中に再び細菌が入り込んで、ここまでの治療が台無しになってしまいます。
ですので、仮歯が入ったら治療を中断せずに、治療終了まで走り切ってしまいましょう。
また、根の先にある膿については、元々細菌と免疫の戦いで生じているものです。
感染を起こしている神経がなくなれば、自然とからだに1~2年をかけて吸収されていきます。ですので、わざわざ歯茎と骨を切り開いて取る事はしません。
治療の成功率を上げるためにお願いしたいこと
①強い痛みが出たらすぐに受診をしましょう
歯の神経が細菌に感染して死んでいく時に、強い痛みが生じます。断末魔の悲鳴そのものです。時に激しく時にかすかに続きます。そして数週間もすると、ある日突然痛みがなくなります。
それは、「痛みがなくなってよかった」ではなく、非常にまずい状態です。
痛みを感じなくなってしまった原因は神経が完全に死んでしまったからなのです。
ですから、強い痛みが出たらすぐに受診をしましょう。神経がまだ生きているとき、つまり細菌感染が根管の中で広がり切っていない時に処置することができれば、治療の成功率が上がります。
②仮詰め、仮歯の段階で中断しないでください
治療時間や患者様の体調の関係から、根管内の洗浄がその日のうちに終わらなかったという時は、治療途中の歯には「仮詰め」(仮封)を行います。
一方、根管充填後から最終の被せ物をセットするまでの間、「仮歯」(仮の歯)を入れる場合もあります。
仮詰めも仮歯もどちらも応急的な処置です。
外れたり劣化したりすると、また歯の中に再び細菌が入り込んで細菌感染を起こします。
「噛めるようになったから」「痛くなくなったから」と治療を中断せず、最後まで通って下さいね。
③治療した歯に無理は禁物です
神経治療後の歯についてですが、神経のなくなった歯は、神経のある歯より構造的に弱くなります。それは当然、「歯の寿命」にもつながります。
ある統計では、神経のない歯が将来失われる確率は、前歯が1.8倍、奥歯が7.4倍になると言われています。
ですので、歯の根の治療をした歯は大切に使いましょう。
やはり傷を負った歯なので、何でも今までのように噛めるとは考えないでください。
せんべい、ジャーキー、するめなど、どこまでいけるかと硬いものを噛んでみるというのはやめましょう。
最後に歯の根の「根の再治療」について
歯の根の治療後に、再び根管の中に残った細菌が悪さをすることがあります。そんな時の「根の再治療」についてご紹介します。
歯の根の治療は、そのまま放置すると失われるしかなかった歯の寿命を延ばすことができる治療方法です。歯の命を救う最終手段であり、それだけに患者様の期待は大きく、歯科医師の腕の見せ所でもあります。
しかし残念なことに、必ずしも成功が約束された治療方法とは言えません。
根管は人それぞれ複雑な形状をしており、現在の技術では、根管内の感染部分を完全に綺麗に取り除くのは不可能なのです。
とくに、根管から伸びる微細な側枝には消毒薬や器具が入り込まないので、根管を充填して取り切れなかった細菌を生き埋めにし、側枝に残った細菌の活動を封じ込めることになります。
患者様の健康状態によっては、取り切れなかった部分に残った細菌たちが勢力を盛り返して、再び悪さをはじめます。
あるいは、根管内の細菌の活動は側枝の中に封じ込められていても、被せ物の縁が虫歯になるとそこから細菌が新たに入り込んで感染を起こすこともあります。
歯の根の治療を行っても下記の症状がでる場合は再治療が必要になる場合があります。
・痛みが引かない
・腫れが治まらない
・歯茎から膿が止まらない
*下記が【再根管治療】の流れです。
再根管治療は、被せ物と土台とガッタパーチャを外し、再度根管内を掃除し、洗浄・消毒して再充填するというのが基本的なパターンです。(1回目の流れを繰り返します。)
・せっかく被せた、最終の被せ物を外さないといけない
・根管内の感染部分を再度除去する必要があるが、一度削っているので歯質が減っているぶん、むやみに掃除ができない
・ガッタパーチャを取り除くのが困難
上記のこともあり再治療は1回目の治療と比べて難しくなります。
*下記が歯根端切除術についてです。
いかがでしたでしょうか?
痛みを感じる神経を失った歯は、虫歯ができても、よほど進行しないと痛みは出ず、発見が遅れがちになります。
歯の根の治療を受けた後は、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けていただき、何かあったとき早期に発見してもらうのが大切になります。
少しでも歯の寿命を伸ばすために、是非、普段からのご来院をお願いいたします。