気になる!妊婦さんの歯科治療についてお答えします
2024年4月3日
今回は妊婦さんの歯科治療についてお話させていただきますね。
「妊娠後に歯が悪くなった」という話を、出産経験のある女性から聞いた事はありませんか?
現在、妊婦さんの方、未来の妊婦さんが歯科治療に対して不安な事や気になる事などを今回は詳しくご紹介させて頂きます。
是非、ご家族・パートナーの方もご一緒に読んでみて下さいね。
妊娠と虫歯の関係について
実は、妊婦さんのお口は虫歯になりやすいです。
そして、その原因はよく言われる「赤ちゃんにカルシウムをとられてしまうから」ではありません。
赤ちゃんを育てるために妊婦さんの身体に起きる変化が関係しています。
ではどんなお口のトラブルがあるのかご紹介させて頂きます。
お口のトラブルを起こしやすくなる変化
① つわり
歯ブラシや歯磨き剤を口に入れるだけで吐き気がする方もいる為、妊娠前より歯磨が丁寧にするのが難しくなります。
歯ブラシが難しくなると虫歯や歯周病の原因になる汚れを取り除けなくなってしまいます。また歯磨き剤の味が苦手になると、歯磨き剤に入っている虫歯予防に有効なフッ素も利用できなくなってしまいます。
つわりによりお口に胃液が逆流し、強い酸に触れた歯の表面が溶けてしまいます。
② 食の好みの変化
妊娠すると味の好みも変わります。甘い物、酸っぱい物が好きになり、虫歯菌の大好物の砂糖や、歯のカルシウムを溶かす酸性度の強い食べ物(柑橘類など)をとる機会が増えるのです。
③ 間食
お腹が大きくなるにつれて胃が押されて、少しずつしか食べれなくなります。
そうなると間食する事が多くなり、虫歯菌はそのたびにエサを貰えて大喜びになります。
④ 唾液の減少
妊娠による身体の変化に伴って、唾液量が減少します。唾液の粘り気が増し、お口の中が洗い流されにくい状態になります。
また、唾液が減ると、虫歯になりかかった歯を修復してくれる唾液の再石灰化作用が弱まってしまいます。
上記のような変化が起きてしまい普段よりも虫歯になりやすくなります。
しかし、これらは赤ちゃんの為自然に起きる変化ですから、虫歯になりやすいからと止められる事ではありません。
だからこそ、こういう時は歯科医院にて検診を受けていただき、プロのサポートを得てご自身の大切な歯を守っていきましょう!
【ワンポイントアドバイス】
酸っぱいものがあがってきたらうがいをしてください!
胃酸がお口の中に習慣的に逆流したり、酸味の強い柑橘類などを日常的に食べていると、その酸に触れた歯の表面のカルシウムが溶け、エナメル質が薄くなってしまうことがあります。
硬いエナメル質が薄くなると虫歯になりやすくなってしまうので、胃酸がお口に上がってきたり酸味の強い物を食べた後は、水でブクブクうがいをして酸を洗い流しましょう!
妊娠と歯周病の関係について
次は歯周病についてはどうでしょうか?虫歯と同様に妊娠と関係しています。
子宮やおっぱいを大きくし、胎児が元気に育つように身体を変化させる女性ホルモン。歯周病菌の仲間にはこのホルモンを栄養源とするものがいて、女性ホルモンが豊富な妊婦さんの歯茎が大好きです。
盛んに増殖し活発に活動します。その為妊娠中は、普段歯茎が腫れない人も歯周病の初期症状「歯肉炎」になりやすく、歯周病(歯肉炎)の方は症状が進行しやすいのです。
歯周病の炎症は低体重児出産(早産)と関連するといわれ、赤ちゃんの成長に影響を与えかねません。早期に歯科医院にて検診を受けていただき、歯周病の予防&治療を行いましょう。
では妊婦さんは治療を受けられるのでしょうか?
もちろん妊婦さんも治療を受けられます。
妊娠前から予防をして、ずっと健康なお口で過ごせるのが理想ですが、もし妊娠中に悪化しても基本的には通常の歯科治療が受けられます。
受けられる時期と注意点についてご紹介させて頂きます。
【妊娠初期(0~15週)】
つわりで繰り返し起こる嘔吐や、嗜好の変化と偏り、吐き気による歯磨き不足などの為に、虫歯や歯周病になりやすいお口へと急激に変化しやすいです。
注意点
赤ちゃんの重要な器官がつくられる大切な時期です。
流産の危険性も考慮して、痛みや炎症をひとまず止めるために応急処置にとどめ、本格的な治療は安定期か産後に行います。
かかりつけの歯科医院で必ず定期的に経過観察を受けましょう。
【妊娠中期(妊娠16~27週)】
徐々につわりがおさまって歯磨きが楽になってくる頃です。
一方、食欲が増して間食の回数が増えるなど、食習慣の変化が虫歯になりやすい時期です。
注意点
胎盤が完成する安定期に入ります。産後まで治療が待てない場合、外科処置を含む一般的な歯科治療を受ける事ができます。
歯のクリーニングも再開していきましょう。
激しい急性炎症を起こすような、進行した歯周病や親知らずの抜歯は、必ず産科の主治医の許可を得て行います。
【妊娠後期(28~39週)】
赤ちゃんが急激に成長して子宮が大きくなるので、胃が圧迫されて一度に沢山食べれなくなります。ちょこちょこ食べる必要があるので、虫歯のリスクが上がる時期です。
注意点
仰向けで診療を受けると大きくなった子宮に大静脈が圧迫され、低血圧症を起こしやすくなります。産科の主治医に相談し、歯科受診の際はチェアの背を少し立てるなど短時間の応急処置にとどめるなど、体調に合わせた治療計画をご相談しましょう。
【ワンポイントアドバイス】
妊娠後期の仰向け姿勢で起きがちな低血圧症。身体を左側に傾けると、大静脈の圧迫を避けられ低血圧症を防ぐことができます。
足を組み、タオルで背中を固定すると安定します。
赤ちゃんへの影響について
次に治療を受ける時に一番気になるのが赤ちゃんへの影響です。
麻酔薬や飲み薬、レントゲンの被ばく量については薬剤の種類や妊娠期により異なります。
歯科の局所麻酔について
一般的な歯科治療でもっとも多く使われている麻酔薬リドカインは、無痛分娩や帝王切開にも使われ、妊娠全週で問題なく使用できる麻酔薬です。
通常量を使っても問題ないとされています。一方、プロピトカインという麻酔薬には、子宮を収縮させ分娩を促進させる作用がある為、妊娠後期の妊婦さんには使用しません。
赤ちゃんの為にも、痛みのストレスを我慢しないでくださいね。
歯科で処方するお薬について
お薬の安全性については、お腹の赤ちゃんに実際に試してみるわけにはいかない為、確認されているお薬はありません。
歯科では、比較的安全性が高いとされるお薬を、その効果が赤ちゃんへの影響を上回ると判断した場合に限り、必要最小限の処方をしています。
歯科のレントゲンについて
歯科のレントゲン撮影は、歯や歯茎や歯を支える骨の中に隠れていて見えない虫歯や歯周病を把握し、ピンポイントで治療をして、最大限の成果を上げるために行う、とても重要な検査です。レントゲン無しの治療は、暗がりを手探りで歩くようなものです。
その為、精度の高い治療が困難になってしまいます。
では歯科のレントゲンの放射線量はどのくらいでしょうか
歯科用デンタルレントゲン撮影1枚につき約0.008msv。パノラマ撮影1枚につき約0.01msvです。
日本に住んでいる人が1年間に浴びる自然放射線量は約2.1msvです。
そして、産婦人科診療ガイドラインには、「50msv未満の放射線量であれば、お腹の赤ちゃんへの影響と被ばく量との間に関連は認められない」とされています。
デンタルレントゲンの撮影枚数 約6万枚 で50msvの放射線量
パノラマレントゲンの撮影枚数 約5万枚 で50msvの放射線量
この基準と比べるといかに歯科のレントゲンの放射線量が少ないかがご理解いただけるのではないでしょうか
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、妊婦さんと虫歯・歯周病との関係や気になる歯科治療についてご紹介させていただきました。
次回は、妊婦さんの検診や予防についてお話させていただきますのでそちらも併せて読んでみてくださいね。