親知らずは抜かないといけないの?
2024年3月19日
歯科医院を受診した時に「親知らずを抜いたほうがいい」と言われた事はありませんか?「今は痛みもないし困っている事はないけど本当に抜かないといけないの?」と疑問に思われる方も多いと思います。
今回は、親知らずについてお話させていただきますね。
そもそも親知らずとはどんなものでしょうか?
親知らずの正式名称は「第三大臼歯」と言います。
何故、俗に親知らずと呼ばれるようになったかというと「親が知らないうちに生えてくるから」と言われています。
親知らずが生えてくるのは上下共に20歳頃です。
子供が小さい内は、親がお口の中をみて仕上げ磨きや永久歯が生えてきているかなどチェックしますが、大人になるにつれてそうしなくなってきます。
だから親の知らない間に生えてくる「親知らず」なのです。(所説あり)
また、「智歯」とも呼ばれますがこちらは英語のwisdom teeth〔知恵がついた大人の頃に生える歯〕の和訳です。
何故、親知らずの抜歯をすすめるのでしょうか?
全ての親知らずに必ずしも抜歯が必要な訳ではありません。
まっすぐ生えているなら問題はありません。
ですが、現代は顎が狭く小さくなって、親知らずが半ば埋もれて生えている(半埋伏)人や、傾いて生えている人が圧倒的に多くなっています。
そうした咀嚼の機能を果たさない親知らずは、虫歯の原因になったり歯茎に炎症を起こしたり、歯並びに影響するだけではなく、全身の健康にかかわってきます。
現在は痛みや異常がなくても、将来的に親知らずが悪さをする可能性を見越して、患者様の将来的な健康を考えて抜歯のご提案をさせていただいております。
では、抜いたほうがいい親知らずについて詳しくご紹介していきますね。
親知らずの生え方ラインナップ
下記は一部ではありますがよくある親知らずの生え方や埋伏の仕方です。
抜いたほうがいい親知らずについて
① 親知らずが隣の歯に悪さをしている
② 親知らずが病気の原因になっている
上記の2パターンが多いです。
では、更に詳しくご紹介していきます。
隣の歯を虫歯にしている
親知らずが傾いて生えていて、手前の歯とぶつかったところが虫歯になってしまうケースがあります。
親知らずがぶつかっている所は食べカスが挟まりやすく歯ブラシも届かない為、虫歯になるリスクが非常に高いです。
もちもん、ぶつかっている親知らず自体も虫歯になりやすいです。
歯並びに影響している
横に倒れて生えた親知らずが手前の歯の側面にぶつかり、押されてしまいます。押された歯が更に隣の歯を押して・・・・と、将来的に歯並びを悪くする可能性があります。
隣の歯の根を失わせている
横に倒れて生えた親知らずが手前の歯の根にぶつかり根の部分的な喪失(吸収)を起こします。根がなくなってしまうと歯の保存が難しくなってしまいます。
根の吸収が少ないうちなら親知らずを抜けば保存できる場合もあります。
歯茎に炎症を起こしている
中途半端に顔を出した歯と歯茎の隙間は深い歯周ポケットが出来ているのと同じ状態です。
その為、内部にプラークが溜まり、炎症が起きたり腫れたり出血しやすくなります。
こちらは、抗菌薬などで炎症を一時的に抑える事ができますが親知らずを抜かない限り、炎症が再発します。
そして注意が必要になるのが「智歯周囲炎」です。
「智歯周囲炎」とは親知らずが関連して起こる歯周病の事を言います。
親知らずは顎の最奥に生えている歯の為、位置的に咀嚼筋や咽頭、頸部へと近いので細菌感染が顎の骨や顔面、首に広がりやすいです。
炎症を繰り返していくと顎の骨が部分的に壊死してしまう「骨髄炎」になったり、皮膚とその下の組織に炎症が起き、顔が蜂に刺されたように腫れてしまう「蜂窩織炎」になってしまう危険があります。
親知らずが病変を作っている
顎の骨の中に埋もれた親知らずが、周りに嚢胞(液体が入った袋状の病変)を作ってしまうことがあります。
嚢胞ができてしまい、骨が著しく吸収されてしまうと骨が脆くなってしまうので例えば転倒してしまい顎をぶつけた衝撃で骨が折れてしまう事もあります。
上記が抜いたほうがいい親知らずです。
いかがでしたか?該当している親知らずはありませんでしたか?
親知らずが原因で歯茎が腫れたりすると自覚症状がありわかりやすいですが埋伏している親知らずなどは普段ご自身では把握するのが難しいです。
歯科医院でも、顎の骨の中に埋まっている親知らずは、外からお口の中を診ただけではどのような状態なのか確認ができません。お口全体のレントゲン写真を撮る事により親知らずの詳しい状態を把握する事ができるので、今は問題がなくても将来的に問題が起こりそうな親知らずがあれば抜歯のご提案をさせていただく事があります。
それでは抜かなくてもいい親知らずはどんなものがあるのでしょうか?
まっすぐに生えていて隣の歯にぶつかっていない虫歯や歯周病のリスクが少ない親知らずや周りの歯茎に炎症を起こしていない親知らずなら抜く必要はありません。
顎の骨に完全に埋もれていて、手前の歯とも離れて周囲に病変を作っていない場合も抜く必要はありません。
しかし、まっすぐ生えていても対合歯が無く、噛み合う歯がない場合は歯が伸びてしまい嚙み合わせに問題が生じる場合はまっすぐ生えていても抜くほうがいい場合もあります。
そして、逆に抜かないほうがいい親知らずもあります。
解剖学的に抜くに抜けない親知らずも存在します。
極まれに親知らずの根が下顎管(下顎の神経)を巻き込むようになっていたり、親知らずが下顎管とくっついているようなケースは、親知らずを抜くときに神経を傷つけ、麻痺が起こるリスクが高い場合です。
または、患者様自身が全身疾患などあり身体の状態が悪い時は無理してすぐに抜く必要はありません。
ここまでで「抜いたほうがいい親知らず」と「抜かなくていい親知らず」についてご紹介させて頂きました。
抜いたほうがいい親知らずが自分にはあるけど・・・「抜くのはやっぱり怖いしどうしよう」「親知らずを抜いたら顔が腫れたって聞いた事がある」「抜くのは入院するの?」など不安な事や気になる事が出てきたかと思います。
では次は、患者様からよく聞かれる質問にお答えしていきますね。
親知らずの抜歯のQ&A
Q:親知らずの抜歯は歯科医院で抜く時と大学病院に紹介されるのは何故ですか?
A:親知らずの生え方や位置などレントゲンにて検査を行います。
特に下顎の親知らずは神経や主要な血管がその近くを通っています。
該当する一般歯科では難しい症例の親知らずに関しては安全性を重視して設備の整った大学病院や専門医にご紹介させていただきます。
上記以外にて、一般歯科でも安全に抜ける場合は紹介せずに抜く症例もある為です。
当院でもレントゲンの検査とお身体の状態などカウンセリングさせていただき、ご紹介か当院にて抜歯かをご相談させていただいております。
Q:親知らずの抜歯後の痛みや腫れは実際どのくらいですか?
A:基本的に、親知らずを抜く時にまっすぐ生えている場合は周りの骨を削ったり歯茎を切開する事はすくないので比較的痛みや腫れはできくいです。
しかし、歯茎の中に埋まっていたりする場合は歯茎を切開して、周りの骨を削り歯を抜いていきます。
そうなると骨を削る量が多いほど腫れが生じます。
抜歯後は鎮痛剤をしっかり服用していただき、術後の感染も起こらないなら、痛みのピークは1日後、腫れのピークは2日後です。そこから徐々に引いていきますのでご安心ください。
しかし、4~5日、あるいは1週間してから腫れや痛みが増してきたなら、術後感染が起きている可能性があります。
「親知らずを抜いて腫れてしんどかった」という方はこのようなケースと思われます。
Q:親知らずの抜歯後に唇がしびれたなど後遺症はありますか?
A:神経のしびれは、親知らずの生えている位置関係上、どうしてもリスクはゼロではありませんが、可能な限り予防策を取っています。
下顎の親知らずのそばには、神経や血管の集まりである下顎管や舌神経が通っています。
抜歯の際にこれらの神経に刺激が加わると、下唇や顎の皮膚にしびれが出る事があります。
通常数週間~数か月で治りますが稀に更に続くこともあります。
しびれのリスクを減らすには親知らずと神経の位置関係を正確に把握する必要があります。
その為、3次元のCTにて位置関係を把握しています。
その際に、リスクが高いケースは抜歯をしないほうがいい事もあるので無理に抜歯は行いません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は【親知らず】についてご紹介させていただきました。
親知らずが悪さをする前に抜歯を検討してみてください。
自分の親知らずは今どんな状態なのか、抜いたほうがいいのかなど知りたい方は是非、歯科医院にてご相談下さいね。