DTX Studio Implantを用いたインプラント診断・シミュレーション実習の講義を行いました
2026年9月16日
8月のお盆明けに、午前・午後とインプラント治療に関する講義をさせていただく機会をいただきました。
午前中は、ノーベルバイオケア様にもご協力いただき、**「DTX Studio Implant」**というインプラント治療のプランニングソフトを使用した診断・シミュレーション実習を行いました。
今回の実習では、CTから得られる3次元的なデータと、口腔内スキャナーから得られる歯や歯肉のデジタルデータを重ね合わせ、実際にインプラント治療の診査・診断、治療計画を立てていく流れを先生方に体験していただきました。
目次
インプラント治療における「診断」の重要性
インプラント治療というと、
「骨があるところにインプラントを入れる」
というイメージを持たれることがあるかもしれません。
しかし、私自身がインプラント治療で大切にしているのは、
「インプラントをどこに入れられるか」ではなく、「最終的にどのような歯をつくりたいのか」から逆算してインプラントの位置を考えること
です。
インプラントを支える骨の量や形態はもちろん重要です。
それだけではなく、
・最終的な歯の位置や形
・噛み合わせ
・周囲の歯との位置関係
・歯肉の厚みや形態
・神経や上顎洞など周囲の解剖学的構造
など、さまざまな情報を総合的に評価して治療計画を立てる必要があります。
そのためにCTや口腔内スキャナーから得られるデジタルデータが、現在のインプラント治療では非常に重要な役割を担うようになっています。
CTデータと口腔内スキャンデータを重ね合わせる
CTでは、顎の骨を3次元的に確認することができます。
骨の高さや幅だけではなく、神経や上顎洞など、手術を行ううえで注意しなければならない解剖学的な構造についても確認します。
一方、口腔内スキャナーでは、
歯の位置や形、歯並び、歯肉などの口腔内の表面情報
をデジタルデータとして記録することができます。
DTX Studio Implantでは、こうした異なるデータを重ね合わせることで、
「骨の中」と「実際のお口の中」を同時に見ながら治療計画を考える
ことができます。
さらに、最終的に入る歯の位置を想定しながらインプラントの埋入位置や角度をシミュレーションすることで、より補綴主導の治療計画を考えやすくなります。
デジタル化によって変わってきたインプラント診断
以前のインプラント治療では、CT撮影時に「ラジオグラフィックガイド」と呼ばれる装置を使用し、口腔内の情報とCT画像との位置関係を把握する方法が多く用いられてきました。
現在ではデジタル技術の進歩によって、口腔内に十分な歯が残っており、CTデータと口腔内スキャンデータを精度よくマッチングできる症例では、従来のラジオグラフィックガイドを用いずに診断を進められるケースも増えてきました。
CTを撮影し、口腔内をスキャンする。
そのデータをソフト上で重ね合わせ、歯科医師自身がその場でさまざまな角度から確認する。
私が歯科医師になった頃と比べても、インプラント治療の診断環境は大きく変化していると感じます。
大切なのは「ソフトが診断する」のではないということ
一方で、デジタル技術が進歩すればするほど、大切にしなければならないこともあります。
それは、
「ソフトが診断してくれるわけではない」
ということです。
どれだけ優れたシミュレーションソフトを使用しても、
「なぜこの位置にインプラントを入れるのか」
「最終的にどのような歯をつくるのか」
「そのためには骨や歯肉の状態をどう評価するのか」
を判断するのは、最終的には歯科医師です。
また、デジタルデータも正しく取得し、正しく重ね合わせ、そこに誤差がないかを確認しながら使用しなければなりません。
だからこそ今回の実習では、単にソフトの操作方法を覚えるだけではなく、データの取り扱い方やマッチングの考え方、最終補綴装置から逆算してインプラントの位置を考えることも大切なテーマとしてお話しさせていただきました。
「最終的な歯」から逆算して考える
インプラント治療の目的は、
「インプラント体を骨の中に入れること」ではありません。
そのインプラントの上に歯が入り、患者さんがしっかり噛むことができ、できるだけ長く安定した状態を維持することが本来の目的です。
そのため、
最終的にどこに歯があるべきなのか
↓
その歯を支えるためにはインプラントがどこにあるべきなのか
↓
その位置にインプラントを埋入するために骨や歯肉の条件はどうなのか
という順番で考えることが重要になります。
これを「補綴主導型(トップダウントリートメント)」の考え方と呼ぶことがあります。
デジタルシミュレーションは、この考え方を実際の3次元画像として確認するための非常に有用なツールの一つです。
歯科医師自身が診査・診断できる環境へ
今回、実習を通して特にお伝えしたかったことの一つが、
歯科医師自身がデジタルデータを扱い、自分で確認しながら診査・診断することの大切さ
です。
現在ではデータを外部へ送り、シミュレーションや設計を依頼する方法もあります。
もちろん、それも一つの方法です。
しかし、自分自身でCTと口腔内スキャンのデータを動かしながら、
「もう少し角度を変えたらどうなるのか」
「最終的な歯との位置関係はどうなのか」
「骨の外に出ていないか」
「周囲の組織との距離は十分なのか」
と何度も確認することには、大きな意味があると思っています。
自分でデータを触ることで初めて気付くこともあります。
今回の実習が、参加された先生方にとって、これから使用するシミュレーションソフトを選択する際や、最終補綴から逆算したインプラント診断を考える際の一つの参考になれば嬉しく思います。
デジタルが進歩しても、最後に大切なのは診査・診断
歯科医療のデジタル化は、今後さらに進んでいくと思います。
CT、口腔内スキャナー、シミュレーションソフト、CAD/CAM、そしてガイデッドサージェリー。
さまざまな技術がつながることで、以前では難しかったことが、よりスムーズに行えるようになってきました。
しかし、どれだけ新しい技術が登場しても、
診査し、診断し、治療計画を立てるという基本が変わるわけではありません。
新しい技術を使うこと自体を目的にするのではなく、その技術をどのように患者さんの安全性や治療の質につなげていくのか。
私自身も、そこを大切にしながらこれからも学び続けていきたいと思っています。
今回、実習にあたりさまざまな準備やサポートをしていただきましたノーベルバイオケアの担当者の皆様にも、この場を借りて感謝申し上げます。
参加していただいた先生方、ありがとうございました。
今回の学びが、それぞれの先生方の明日からの臨床、そして患者さんのより良い治療につながれば嬉しく思います。











