CSTPC講習会で症例発表をさせていただきました|長期的に「噛み合わせ」を考える大切さ
2026年9月2日
城東区にある歯科・歯医者のしぎの歯科の院長の舩戸です。
8月に開催されたCSTPCの講習会に参加させていただき、今回は私自身の症例について発表する機会をいただきました。
日々の診療では、患者さんの診査・診断を行い、治療計画を立て、実際の治療を行うことに多くの時間を使います。
しかし、その治療を改めて整理し、
「なぜこの診断に至ったのか」
「なぜこの治療方法を選択したのか」
「治療の結果はどうだったのか」
「もっとできたことはなかったのか」
と振り返ることも、歯科医師として非常に大切な時間だと感じています。
今回の症例発表も、自分自身のこれまでの臨床を振り返り、改めて多くのことを学ばせていただく機会となりました。
目次
17年近く診療に携わらせていただいている患者さん
今回発表させていただいたのは、私が17年近く診療に携わらせていただいている患者さんの症例です。
長く診させていただく中で、患者さんのお口の状態も少しずつ変化していきます。
今回の患者さんにはもともと骨格的な特徴があり、それに伴う噛み合わせの問題も抱えておられました。
歯は、むし歯や歯周病だけで悪くなるわけではありません。
日々の食事や会話の中で繰り返し力が加わり続けています。
その力のかかり方に偏りがあったり、上下の歯の噛み合わせに問題があったりすると、一部の歯に過剰な負担が集中することがあります。
その結果、歯がすり減る、欠ける、被せ物が壊れる、歯が揺れるなど、さまざまな問題につながることがあります。
今回の患者さんも、長年そうした問題に悩まれていました。
「壊れたところを治す」だけでは解決しないことがあります
例えば、被せ物が外れた場合、その部分だけをもう一度治療することはできます。
しかし、
「なぜそこが壊れたのか?」
という原因を考えなければ、同じ問題を繰り返してしまう可能性があります。
一つの歯だけを見ると問題が解決したように見えても、お口全体で考えると、根本的な原因が残っていることがあるからです。
特に複数の歯が繰り返し壊れてしまう場合や、歯のすり減りが大きい場合、噛みにくさを感じている場合などには、一部分だけではなく、お口全体を一つの単位として診査・診断することが必要になることがあります。
当院では、このような場合に「全顎的な診断」を行うことがあります。
現在残っている歯の状態だけではなく、
歯周組織、噛み合わせ、顎の位置、歯の位置、骨格的な特徴、顎の動き、見た目、将来的な安定性など、さまざまな要素を総合的に考えていきます。
患者さんと相談しながら決めた全顎的な治療
今回の患者さんについても、これまでの長い経過を踏まえながら、今後どうしていくことが良いのかを患者さんと相談しました。
全顎的な治療は、決して小さな治療ではありません。
治療期間も必要ですし、患者さん自身にもさまざまなご負担があります。
だからこそ、
「歯科医師が治したいから治療する」
のではなく、
現在どのような問題があり、治療によって何を改善したいのかを患者さんと共有することが大切だと考えています。
今回も患者さんと相談を重ね、ご理解いただいた上で、お口全体の診査・診断を行い、噛み合わせを含めた治療計画を立てました。
目指したのは、単にきれいな歯を入れることではありません。
これから先もできるだけ安定した状態で噛み続けられること。
そして、新しく治療した歯ができるだけ長く機能できる環境をつくること。
そのために、お口全体のバランスを考えながら治療を進めていきました。
診査・診断・治療計画・治療経過を振り返る
今回のCSTPCでの症例発表では、
診査、診断、治療計画、実際の治療経過、そして治療後の考察
までを一つひとつ整理して発表させていただきました。
普段の診療では自分の頭の中で理解しているつもりでも、それを第三者に分かるようにスライドにまとめていくと、さまざまなことに気付きます。
「この時点でもう少し違う検査ができたのではないか」
「この判断は本当に適切だったのか」
「もっと分かりやすく説明するには、どの資料が必要だったのか」
など、改めて振り返ることで見えてくる反省点もありました。
もちろん、治療がうまくいった部分もあります。
しかし、症例発表で本当に大切なのは、治療結果を見せることだけではなく、その治療を通して自分が何を考え、何を学び、次の臨床にどう生かすのかということだと思っています。
「伝えること」は、自分自身が学ぶこと
私はこれまで講義や症例発表をさせていただく機会をいただいてきましたが、そのたびに感じることがあります。
それは、
人に伝えようとすることで、自分自身が一番勉強させられる
ということです。
何となく理解していることと、人にきちんと説明できることは違います。
なぜその診断なのか。
なぜその治療なのか。
その選択にはどのようなメリットとデメリットがあるのか。
それらを整理して人に伝えるためには、自分自身がもう一度基本に戻って考えなければなりません。
今回もスライドをつくりながら、たくさんの反省や気付きがありました。
そして発表後にさまざまな先生方からご意見やアドバイスをいただくことで、自分一人では気付かなかった視点から症例を見ることができました。
治療が終わったところが「ゴール」ではありません
そして今回の症例について、もう一つ大切にしたいことがあります。
それは、治療が終了した時点がゴールではないということです。
特に全顎的な治療を行った患者さんでは、治療後のメインテナンスと経過観察が非常に重要になります。
治療直後には良い状態であっても、その状態が5年、10年、その先まで維持できるかどうかを見ていかなければなりません。
噛み合わせに変化がないか。
歯周組織は安定しているか。
新たに負担が集中している部分はないか。
患者さん自身が快適に噛めているか。
そうしたことを定期的に確認しながら、必要に応じて小さな変化の段階で対応していくことが大切です。
今回の患者さんとも、すでに17年近いお付き合いになります。
これからもメインテナンスと経過観察を続けながら、できるだけ良い口腔環境を維持できるよう、患者さんと一緒に時間を重ねていきたいと思っています。
相談できる環境、メンターの存在に感謝して
歯科医師として経験年数が増えても、すべてを一人で判断できるわけではありません。
むしろ経験を重ねるほど、一つの症例にいろいろな考え方や治療方法があることを感じます。
だからこそ、自分の症例について率直に相談でき、さまざまな角度から意見をいただける場所があることは、本当にありがたいことです。
そして、自分が迷ったときに相談できる先生や、臨床についてアドバイスをいただけるメンターの存在にも改めて感謝しています。
自分一人の経験だけで完結するのではなく、学び、相談し、振り返り、それをまた患者さんの診療へ還元していく。
これからもその繰り返しを大切にしていきたいと思います。
今回の症例発表でいただいた多くの気付きと学びを、また明日からの臨床に生かしてまいります。
そして、長く診療に携わらせていただいている患者さんとのご縁にも感謝しながら、これから先も一緒に良い状態を守っていけるよう、一回一回の診療、そしてメインテナンスの時間を大切にしていきたいと思います。








