歯科医師全員で支台歯形成の院内勉強会を行いました|基本を繰り返すことの大切さ
2026年8月21日
当院では月に一度、勤務してくれている歯科医師と一緒に、ドクター院内勉強会を開催しています。
日々の診療を振り返ったり、症例についてディスカッションしたり、新しい知識や技術について学んだりと、テーマはその時々で変わります。
先月からは、
「形成を再認識する」
というテーマで、歯科医師全員が模型を用いて支台歯形成の実習を行っています。
「歯科医師になって何年も経っているのに、模型で歯を削る練習をするの?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし私たちは、普段から当たり前のように行っている治療だからこそ、時々立ち止まって基本を見直すことが大切だと考えています。
今回は、私たちがなぜ院内でこのような勉強会を行っているのか、そして「支台歯形成」が被せ物の治療においてなぜ重要なのかについてお話ししたいと思います。
目次
支台歯形成とは?
「支台歯形成(しだいしけいせい)」という言葉は、患者さんにはあまり馴染みがないかもしれません。
簡単にいうと、むし歯などで大きく失われた歯にクラウン(被せ物)を装着する際、被せ物が適切に入るように歯の形を整える処置のことです。
一般的には「歯を削る」と表現される処置ですが、実際には単純に歯を小さくすればよいわけではありません。
どのくらいの量を削るのか。
どの方向から削るのか。
被せ物が入るために必要な角度はどうするのか。
歯ぐきとの境目をどの位置に設定するのか。
噛み合わせに必要なスペースをどのくらい確保するのか。
こうしたさまざまなことを考えながら、最終的な被せ物をイメージして歯の形を整えていきます。
「歯を削る」にも理由があります
患者さんからすると、歯科医師が歯を削っているところを直接見ることはできません。
そのため、
「被せ物が入れば、削り方はそれほど関係ないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、支台歯形成はその後の被せ物の精度や形態を考えるうえで非常に重要な工程です。
例えば、歯を削る量が少なすぎると、被せ物に必要な厚みを確保しにくくなる場合があります。
反対に、必要以上に削ってしまえば、健康な歯質を余分に失うことになります。
また、形成した歯の形や角度は、被せ物の適合や維持、清掃性などを考えるうえでも重要です。
だからこそ、「必要なところを、必要な量だけ、目的を持って削る」ということが大切になります。
これは歯科医師にとって基本的な技術の一つですが、基本だからこそ非常に奥が深い分野でもあります。
経験を積んだからこそ、もう一度基本に戻る
支台歯形成は、歯科医師が日常診療の中で頻繁に行う処置です。
経験を積めば、ある程度は自然に手が動くようになります。
しかし、そこに一つの落とし穴があるとも思っています。
毎日繰り返していることほど、
「いつもこうしているから」
「これまで問題なかったから」
と、自分自身の方法を客観的に振り返る機会が少なくなってしまうことがあります。
そこで今回の勉強会では、あえて模型を使い、一つひとつの工程を確認しながら丁寧に形成してもらいました。
そして形成が終わった模型を一緒に確認し、
「ここはもう少しこうした方がいい」
「この部分は非常にきれいに形成できている」
「なぜ、この形にする必要があるのか」
など、私からもフィードバックを行いました。
単に「上手」「下手」で評価するのではなく、なぜその形にするのかを歯科医師全員で考える時間にすることを大切にしています。
分かっていることを、もう一度確認する
今回の勉強会のテーマを「形成を学ぶ」ではなく、「形成を再認識する」としたことにも理由があります。
勤務してくれている先生方は、もちろん歯科医師として支台歯形成の知識を持ち、普段から実際の患者さんの治療を行っています。
だからこそ、新しい技術を覚えるというより、
「分かっていることを、もう一度基本から見直す」
ことを目的にしました。
これは私自身も同じです。
長く臨床を続けていると、新しい治療法や新しい材料、デジタル技術などに目が向きやすくなります。
もちろん、新しいことを学ぶことは大切です。
しかし、新しい技術を生かすためにも、その土台となる基本的な診断や治療技術が欠かせません。
何年歯科医師をしていても、時々基本に戻る。
そして、自分が当たり前だと思っていることをもう一度確認する。
その積み重ねが大切なのではないかと思っています。
同じ模型を削るから分かること
今回、歯科医師全員で同じテーマ、同じ条件で模型を形成したことにも意味があります。
歯科医師それぞれに臨床経験がありますし、これまで学んできた環境も異なります。
そのため、同じ「支台歯形成」という処置でも、細かな考え方や手順には違いが出ることがあります。
もちろん、すべてを全く同じにする必要はありません。
しかし、一つの医院で患者さんを診療する以上、大切な部分については共通した考え方や治療基準を持つことが重要だと考えています。
実際に同じ模型を削って、それを一緒に見ながら話をすると、
「自分はこう考えていた」
「こちらの方法の方が分かりやすい」
「この部分については医院としてこの考え方を大切にしよう」
という具体的な話ができます。
教科書やスライドを見るだけではなく、同じ体験をすることで、共通の認識をつくる。
これは今回の勉強会で特に大切にしたかったことの一つです。
一人の技術ではなく「医院全体の治療の質」を高める
歯科医院には複数の歯科医師が勤務しています。
患者さんにとっては、どの歯科医師が担当しても「しぎの歯科で受ける治療」です。
だからこそ、院長である私自身が技術を高めるだけでは十分ではありません。
勤務してくれている先生方と知識や考え方を共有し、医院全体として治療の質を高めていくことが重要だと考えています。
そのためには、
「このようにしてください」
と一方的に伝えるだけではなく、一緒に模型を削り、症例を見て、ディスカッションしながら学ぶことが大切です。
そして、勤務医の先生方から私自身が気付かされることもあります。
教える側・教えられる側ではなく、歯科医師全員でより良い治療について考える。
月に一度の院内勉強会を、そのような時間にしていきたいと思っています。
技術の進歩とともに、基本も大切に
現在の歯科医療では、口腔内スキャナーやCAD/CAM、デジタル技術などが急速に進歩しています。
被せ物の製作方法も、以前と比べて大きく変化しています。
しかし、どれだけデジタル技術が進歩しても、その前段階で歯科医師が行う診査・診断や形成が重要であることに変わりはありません。
新しい技術を積極的に学びながらも、基本を疎かにしない。
そして、ときどき立ち止まって、
「自分たちが普段行っている治療は、本当にこれでよいのか?」
と振り返る。
これからも、そんな姿勢を医院全体で大切にしていきたいと思います。
共通の体験から、共通の認識へ
今回の支台歯形成実習を通して、改めて感じたのは、
「共通の体験を通じて、共通の認識を持つことの大切さ」
です。
歯科医師それぞれが個人で勉強することも大切ですが、一つの医院で診療を行う仲間として、一緒に学び、一緒に考える時間も必要です。
普段から当たり前に行っている治療だからこそ、基本に戻って丁寧に確認する。
そして、その学びを日々の患者さんへの治療に還元していく。
これからも月に一度のドクター勉強会を継続し、勤務してくれている先生方とともに、少しずつ医院全体の診療の質を高めていきたいと思います。













