勤務医・研修医の先生と支台歯形成実習|学んだことを、いつか次の世代へ
2026年10月7日
目次
城東区にある歯科・歯医者のしぎの歯科の院長の舩戸です。
先週末、診療終了後に勤務医の先生、そして大阪歯科大学から当院へ研修に来ていただいている研修歯科医の先生と一緒に、支台歯形成の講義と実習を行いました。
今回のテーマは、上顎前歯の支台歯形成です。
診療が終わってからの時間でしたので、みんな疲れもあったと思いますが、一つひとつ確認しながら実際に手を動かして練習しました。
支台歯形成とは?
「支台歯形成」という言葉は、患者さんにはあまり馴染みがないかもしれません。
虫歯などによって大きく歯を失った場合、歯を削って形を整え、その上に被せ物(クラウン)を装着することがあります。
その被せ物が適切に入るように、歯を必要な形に整えることを支台歯形成といいます。
一見すると、「歯を削る」というシンプルな処置に見えるかもしれません。
しかし実際には、歯科治療の基本がたくさん詰まっています。
どれくらい削るのか。
どの方向に削るのか。
どのような角度をつけるのか。
歯肉との境界をどこに設定するのか。
被せ物に必要な厚みをどう確保するのか。
そして、できるだけ健康な歯質を残すにはどうすればよいのか。
一つひとつに理由があります。
「きれいに削る」ことが目的ではない
今回の実習でも大切にしたのは、
「上手に、きれいに削る」ことだけを目標にしない
ということです。
支台歯形成には、最終的に装着する補綴装置から逆算した考え方が必要になります。
どのような材料の被せ物を入れるのか。
どのような形態にしたいのか。
どれくらいの厚みが必要なのか。
噛み合わせはどうなのか。
歯肉との関係はどうなのか。
それらを考えたうえで、
「なぜ、ここをこの量だけ削るのか」
を理解して形成することが大切です。
私自身、
「必要なところを、必要な量だけ、目的を持って削る」
ということを大切にしています。
上顎前歯だからこそ考えること
今回は特に、上顎の前歯をテーマにしました。
前歯は、食べ物を噛むという機能だけでなく、患者さんの見た目や笑顔にも大きく関係する部分です。
そのため、
歯の形。
歯の長さ。
左右のバランス。
歯肉との調和。
唇との関係。
そして噛み合わせ。
さまざまなことを考えながら治療する必要があります。
だからこそ、ただ模型の歯を削って終わるのではなく、
「最終的にどのような歯をつくりたいのか」
をイメージしながら、一つひとつのステップを練習してもらいました。
一気に上手くなるのではなく、ステップごとに
形成は、一度説明を聞いただけで上手くなるものではありません。
私自身も若い頃、何度も模型を削り、先輩の先生に見てもらい、修正しながら練習してきました。
今回も、
まずコンセプトを理解する。
次に、ステップごとに形成する。
途中で一度止めて確認する。
どこが良かったのか。
どこを修正すればよいのか。
そして、もう一度やってみる。
そんな流れで実習を行いました。
最初から完成形だけを求めるのではなく、一つひとつの工程の意味を理解して積み重ねることが、結果として確実な技術につながっていくと思っています。
「できる」だけではなく「なぜ」を説明できるように
若い先生を指導していると、改めて感じることがあります。
それは、
自分ができることと、人に説明できることは違う
ということです。
長く診療していると、無意識に行っていることが増えてきます。
でも、それを若い先生に伝えようとすると、
「なぜ、このバーを使うのか」
「なぜ、この順番なのか」
「なぜ、ここはこれ以上削らないのか」
と、一つひとつ言葉にしなければなりません。
教えることで、自分自身が基本に戻る。
そして、自分の診療をもう一度見直す。
教育の時間は、教わる側だけではなく、教える側にとっても学びの時間なのだと思います。
いつか、次の世代へ
そして今回、実習をしながら一番感じたことがあります。
私が今、先生たちに伝えていることも、もともとは私自身が多くの先生方から教えていただいたことです。
自分一人で身につけたものではありません。
先輩の先生方から教えていただき、
自分で練習し、
臨床で悩み、
失敗や反省を重ね、
そこに自分なりの経験が少しずつ加わってきました。
そして今、それを若い先生たちへ伝える立場になっています。
だからこそ願うのは、
今回一緒に学んだ先生たちが、いつか自分より若い先生に教える立場になった時、この時間に学んだことをまた次の世代へ伝えてくれること。
すべてをそのまま伝える必要はありません。
その頃には新しい材料や技術が生まれ、今とは違う治療方法になっていることもあるでしょう。
でも、
「なぜそうするのかを考えること」
「基本を大切にすること」
「学んだことを次の人へ伝えること」
そうした姿勢は、時代が変わっても残っていってほしいと思っています。
技術と考え方をつないでいく
歯科医師として働ける時間には限りがあります。
だからこそ、自分が学んできたことを自分だけのものにせず、次の世代へ少しずつ渡していくことも、今の自分の役割の一つだと感じるようになりました。
そして若い先生たちが、そこにさらに新しい知識や経験を加えて、また次の世代へ伝えていく。
「教わる人」から「できる人」へ。
そしていつか、「教える人」へ。
そんな循環が医院の中に生まれてくれたら、とても嬉しく思います。
診療後で疲れている中、最後まで一緒に実習してくれた先生方、お疲れ様でした。
今日すぐにできるようにならなくても大丈夫です。
一つずつ繰り返しながら、自分の技術にしていってください。
そしていつか、この時間に学んだことを、また次の世代へ。
そんな日が来ることを楽しみにしています。









