大人のマウスピース型矯正について 前半
2024年9月12日
今回は、大人のマウスピース型矯正についてご紹介させていただきます。
マウスピース型矯正はまだ、新しい治療法のため、他の歯科治療に比べて患者様の協力が必要な事や、どのように治療していくのか、ご存じない方も多いでしょう。
適切な診断のもと、患者様の協力が得られれば、目立ちにくく、虫歯になりにくい、すばらしい治療法です。
マウスピース型矯正をお考えの方に、治療を受ける前に知っていただきたいポイントをご紹介させていただきますね。
まずは、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正の違いについて
大人の方の歯の矯正治療というとワイヤー矯正が以前は一般的でしたが、患者様自身が取り外しが可能で、目立ちにくいマウスピース型矯正が、数年前より普及してきました。
当院でも、マウスピース型矯正をされる患者様は増加傾向にあります。
どんな患者様でも精密検査は必須となります。
そして、適切な診断のもと治療が施されれば、メリットの大きい治療と言えます。
その一方で、トラブルの話を聞くこともあります。
「マウスピース型矯正」とインターネットで検索すると「低コスト」「定期通院なし」などと表示されたりします。
ですが、歯の矯正治療は、低コストとはいえません。また、手軽に短期間で受けられるものではありません。
無理に短期間で終えようとすれば、目標とする歯並びや嚙み合わせが得られないだけではなく、体やお口に悪影響を及ぼしかねません。
目指すお口の状態はどんな治療方法を選択したとしても、同じです。
ですので「マウスピースの矯正だから抜歯しない」なんてことはありません。
ワイヤー矯正装置には表側と舌側の2タイプあります!
ワイヤー矯正装置(表側)
*取り外しが不可となります。
メリット
・多くの症例に対応が可能。
・固定式で常に強制力がかかり、表側であるため確実に歯が移動させやすい。
・舌側のワイヤー矯正に比べて、発音しやすい。
デメリット
・装置が目立つ。
・固定式でプラーク(歯垢)がたまりやすいため、適切なブラッシングが必要。
・ワイヤー調整後、歯の移動にともない痛みが生じることがある。
・装置により、はじめはお口に違和感がある。
・口内炎ができやすい。
ワイヤー矯正装置(舌側)
*取り外しが不可
メリット
・歯の裏側の装置が見えないため、矯正歯科治療をしていることを気づかれにくい。
・固定式で常に強制力がかかるため、歯を移動させやすい。
デメリット
・歯磨きがしづらく、プラーク(歯垢)がたまりやすいため、裏側の装置への適切なブラッシングが必要。
・舌に近い部分に装置があるため、発音しづらい。
・ワイヤー調整後、歯の移動にともない痛みが生じることがある。
・装置により舌に違和感がある。
マウスピース型矯正
*取り外しが可能
メリット
・透明なマウスピースであるため目立ちにくい。
・食事や歯磨き時に取り外しができるので食事がしやすく、衛生的。楽器の演奏時など外すことができる。
・舌側のワイヤー矯正にくらべ、発音しやすい。
・金属アレルギーの方に対応できる。
・治療計画のシミュレーションが可能。
デメリット
・まったく見えないわけではない。
・お口の状態により推奨できないケースがある。
・マウスピース装着後に歯の移動にともなう痛みが生じることがある。
・装着時間が確保できるか否かが患者様自身にゆだねられ、装着時間が短いと、歯が適正に移動しない。また、治療が長期化することがある。
・指示通りに患者様がマウスピースを交換しないと、歯が適正に移動しない。
治療前に知ってほしいポイント
*マウスピース型矯正治療はどのように進むのかとあわせてご紹介いたします!
ポイント①患者様の協力度が治療結果に影響します!
ワイヤーによる矯正治療では、定期的に患者様に歯科医院を受診していただき、その都度、歯科医師が装置を調整して、歯を動かしていきます。
調整していれば確実に歯は動きます。一方マウスピースによる矯正では、患者様自身がマウスピースを一定の時間装着し、歯を移動するために形の違うマウスピースを定期的に交換し、歯並びを整えていきます。取り外しができるため、装着しなければ、歯にかかる力はまったくなくなります。つまりマウスピースによる矯正治療の成果は、患者様の協力にゆだねられる部分が大きいといえるのです。
一般的にマウスピースの装着は毎日20~22時間以上が望ましく、歯科医師の治療計画にもよりますが、2週間から1週間に1回など定期的に交換していきます。
全てのマウスピースを装着し終わるまで*半年~3年かかります。(*期間は症例によります)
食事以外のほとんどの時間でマウスピースを装着することが望ましい治療ですので、装着時間が短かったり、指示通りに交換がなされないと、治療が長期化してしまうことは否めません。
ポイント⓶治療は、精密検査があってこそ!
どんな治療でも検査をしなければ、治療計画を立てることはできませんし、まして適切な治療を施すこともできません。矯正治療では、ワイヤー(表側・舌側)、マウスピースなどどのような装置を使う場合でも、次に示すような精密検査が基本となります。
特に重要なのが頭部X線規格写真撮影で、歯や顎、横顔の現状の把握と、治療による歯の動きを予想する上で欠かせません。
なお、治療途中も適切な歯の移動が行われているか、顎の骨の状態やお顔、口元の状態を確認するために検査を行います。
*基本検査⓵お口・お顔の写真撮影
歯並びや噛み合わせの状態、虫歯や歯茎の異常などを把握するために、お口の中を様々な角度から撮影します。また、正面や横顔、笑顔も撮影します。
*基本検査⓶レントゲン写真の撮影
頭部X線規格写真撮影
正面と側方からのレントゲンを撮影します。上下の顎の位置関係や歯の倒れ具合など、細かく分析して状態を把握します。適切な矯正治療を行う上での要となる検査です。
歯科パノラマレントゲン撮影
虫歯や歯周病などの問題や親知らず、顎の状態などをみます。
*基本検査⓷模型作製用の型どり
装置の作製に必要な石膏模型を作りますが、その為にまずは歯の型どりをします。
最近では、3次元的な画像の撮影ができる【オーラルスキャナー】が普及してきています。
3Dプリンターから作製した模型を採用している歯科医院も増えてきています。
上記の検査以外にも歯周病の検査やCT撮影を行うこともあります。
精密検査を行い、診断・検査結果・治療法の説明を行います。
当院では、マウスピース型矯正の場合は、【全体の矯正を行う、インビザライン】【部分的な矯正を行う、インビザGo】を取り扱いしております。
症例により、マウスピース型矯正を推奨しない場合は、ワイヤー矯正をご提案させていただく場合もございます。
インビザライン、インビザGoの場合は、事前シミュレーション画像や治療計画を診ていただき、ご納得いただけましたら、同意書と契約書の作製をさせていただきます。
ポイント③マウスピース装置は矯正装置のひとつ
ポイント⓶にて精密検査についてふれましたが、その結果によっては、マウスピースによる治療が向かないこともあります。
たとえば、傾斜した歯を起こしたり、捻じれた歯を適切な状態に治したり、あるいは抜歯するようなケースや歯の移動距離が大きいケースなどでは、ワイヤー矯正の方が適していることもあります。マウスピースの装置は年々進化しており、対応できるケースも増えてきているとはいえ、3次元的に歯の移動がしやすいワイヤーによる矯正治療の方が適応範囲は大きいです。マウスピースによる矯正治療を希望されていても、ワイヤー矯正による治療計画を提案されることがあります。
また、ワイヤー矯正とマウスピース矯正を併用することもあります。
いかがでしたでしょうか?
今回は大人の矯正について、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正の違いについてと矯正をするために必要な精密検査について詳しくご紹介させていただきました。
次回はマウスピース型矯正がスタートしてからのことをご紹介させていただきますね。