酸蝕症ってどんなもの?!
2024年8月22日
酸蝕症ってどんなもの?!
皆さん、【酸蝕症】という歯の病気をご存じでしょうか?
酸蝕症とは、酸性度の強い食べ物・飲み物、また逆流した胃酸に日常的にさらされることにより、歯が病的に溶けて、傷んでしまう症状を酸蝕症と言います。
すっぱいものを欠かさず食べる健康志向の食生活や、ストレス社会の中増え続けている逆流性食道炎など、私達の食生活や多忙な毎日との関わりがあるので、現代人ならではの生活習慣病として注目されています。
今回は、そんな【酸蝕症】について、ご紹介させていただきます。
酸蝕歯と虫歯の違い
酸蝕症とは、歯に胃酸や酸性の飲食物が「繰り返し触れる」ことで起こる病気です。
虫歯や歯周病に続く第三の歯科疾患として注目されています。
そして、酸蝕によって病的に溶けてしまった歯を【酸蝕歯】と呼んでいます。
歯は、元々、酸がとても苦手です。
酸に触れると化学反応を起こして溶けてしまうからです。
とはいえ、食べ物のほとんどは酸性の物が多いですよね。
なのに、歯が溶けてしまわないのは、唾液が酸を洗い流して中和して、歯を守ってくれているからです。
ただし、唾液の力にも限界はあります。
強い酸が口の中に繰り返し入ってくると、唾液の作用が追いつかずに、歯が溶けてしまいます。
虫歯も、虫歯菌の出す酸によって歯が溶けて穴があく病気ですが、酸蝕症との決定的な違いは「被害の範囲」です。
虫歯は磨き残したプラークの中に棲む虫歯菌が、砂糖を食べ、酸を出すことによって起きます。その為、起きる場所は限局的です。
一方、酸蝕歯は、酸が触れた歯面全てで起きます。
つまり、被害が広範囲になりやすいのです。
また、硬いエナメル質が溶けて薄くなったところに虫歯ができると進行が加速し、酸で軟らかくなった歯は摩耗・咬耗も病的に進行しやすく、トラブルが複合的に拡大しやすくなるのも酸蝕症の特徴です。
では、酸蝕歯になったらどうなるのでしょうか?
酸蝕が起こった前歯では、表面のエナメル質が白く濁って見えたり、歯の内側の象牙質が透けて見えたり、歯の先端が欠けてザラついたりします。
奥歯では、歯が丸みを帯びたり、歯がどんどんすり減ったりするため、しみやすく、噛んだ時に痛みを感じることがあります。
さらに進行すると奥歯が欠けてくることもあります。
症状としては、冷たい水がしみる(知覚過敏)、歯がへこむ、歯のへこみを噛んだ時に傷む(咬合痛)、歯が欠けるなどがあります。
さらに、もともと存在していた歯のすり減りや虫歯が悪化しやすくなります。
胃酸による酸蝕症が増えています!
現在、酸蝕症の原因として注目されているのが、「胃酸の口への逆流」です。
専門家の医師によると、現代人の約10人に1人に逆流性食道炎の疑いがあり、羅患率は増加しています。
胃酸の逆流を誘発する代表的な因子は、炭酸飲料やすっぱいものの食べ過ぎ飲みすぎです。
炭酸飲料やすっぱいものは、酸蝕症の因子になる飲食物と同じなので、こちらは後ほどご紹介させていただきます。
逆流性食道炎を防ぐための消化器内科の食事指導と、酸蝕症を防ぐための歯科の食事指導に共通項があり、一つの指導内容が両科の治療に役立つのですから、これは患者さんにとって大きな朗報です。
このほか、摂食障害(拒食症や過食症など)による、持続性の嘔吐と酸蝕症の深い関りも報告されています。
この場合は、診療内科に相談し、歯科でも歯が溶けていないか診てもらいましょう。
酸蝕症になりやすい飲食物・食べ方・飲み方とは!?
酸蝕歯になりやすい飲食物として、コーラやオレンジジュースなどのソフトドリンク、黒酢やリンゴ酢などのお酢系飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、柑橘類などの果実、酢の物などが挙げられます。
酸性度の強い飲食物を、高頻度に(ほぼ毎日)摂取する習慣があり、しかも時間をかけてチちびちび食べたり、飲んだりする癖(デスクワーク中の栄養ドリンクや運転中の炭酸飲料、運動中のスポーツドリンクなど)のある人ほど、酸が歯にふれている時間が長く、唾液による洗浄効果も期待できないため、歯が溶けやすくなります。
他にも、前歯で柑橘類などの果実をかじったり、酢の物をすするようにして食べる方は要注意です。
注意したい生活習慣の中の酸蝕症のリスク!!
*健康のために柑橘類や黒酢を毎日かかさない!
今、国内では、健康のために酢や柑橘類を積極的にとるかたが増えています。
すっぱいものを積極的にとる健康法は、習慣的に続けてこそよい結果がでます。
酸蝕症は、歯に酸が過剰に触れることによって起こるので、健康意識が高いまじめなかたほど酸蝕症になりやすい傾向にあります。
典型的なのは、酢の原液を飲んでいるかたです。
一度に飲むとむせるので、ちびちびと唾液で薄めながら飲みます。
そのたび酸が歯に繰り返し触れ、ダメージが広がりやすいのです。
同様に、レモンをちびちびかじったり、輪切りのレモンを時間をかけてしゃぶるといった行為も非常にリスキーです。
もしもこうした健康法をどうしても続ける必要があるのなら、カプセル入りの酢に代えたり、飲みやすく薄めて歯になるべく触れないようにストローで飲んだり、飲んだ後に水を一口飲むなど、歯をいたわる方策を立てましょう!
*ジョギング・筋トレのお供はスポーツ&ビタミン飲料
スポーツ中は唾液が乾いて洗浄作用がきかず、酸蝕症のリスクが増大します。
お茶や水にしましょう。スポーツ飲料がどうしても必要なら、飲んだあとにひと口水を。
筋トレ中のビタミン飲料は、くいしばり時の咬耗のリスクに注意してください。
*チューハイ、梅酒、ワインなど毎晩ちびちびと。
果汁タップリのチューハイ、ワインなど、酸味の強いお酒が人気です。
時間をかけてちびちび飲む方が身体にはよいでしょうが、歯が酸に長く触れることになり、酸蝕症のリスクになります。
また、酸性のお酒を口に残したまま寝てしまう寝酒にも注意してください。
*赤ちゃんがぐずったら哺乳瓶でジュース。
赤ちゃんの歯は軟らかく、酸にデリケートです。
哺乳瓶で普段からジュースを飲ませていると、前歯の裏に酸が集中的に触れ、酸蝕症の原因になります。また、発熱時にイオン飲料を与えるときは、飲ませたあとガーゼなどで前歯の裏側をぬぐってあげましょう。
酸で軟らかくなった歯は、摩耗・咬耗しやすい!
酸で溶けて軟らかくなった歯をゴシゴシ強く歯磨きをしたり、歯ぎしりが加わったりすると摩耗・咬耗が急激に進行しやすくなります。
酸蝕症だと診断された方、酸蝕症の疑われる方は、酸で軟化した歯を歯ブラシで摩耗させないように、食後30分ほどしてから歯磨きしましょう。
30分ほどすると、歯を守ってくれる唾液の力が働いて、歯の硬度が戻ってくることが明らかになっています。
また、歯ブラシは軟らかめのものを使用しましょう。
いかがでしたでしょうか?
「酸蝕症?自分には関係ない」と思っている方、実は、軽度な症状のものまで入れると全世代を通じて4人に1人が酸蝕症になっています。
自分以外のご家族にも酸蝕症のリスクになる生活習慣をお持ちの方はいらっしゃいませんでしたか?
酸蝕症は【長時間、歯に酸をさらさない】【直接、酸を歯に触れないようにする】【酸に触れた歯が軟らかい間は、余計な力を加えない】この3つのポイントにもとづいて生活習慣を見直して、酸蝕症のリスクを減らしていきましょう!