虫歯のいろは 初期虫歯について
2024年8月8日
虫歯のできはじめの段階である【初期虫歯】。
テレビやネットでも耳にする機会は増え、言葉としてもだいぶ市民権を得てきました。
でも実際、どんな見かけで、どのようにできるかとなると、ご存じないかたも多いようです。
今回は、そんな初期虫歯についてご紹介させていただきます。
「虫歯は黒い」とは限りません!
虫歯というと、「黒い」とか「穴が開いている」というイメージがありますが、「穴の開いていない」虫歯もあります。
それが虫歯のできはじめの段階である【初期虫歯】です。
初期虫歯になっている部分は、健全な歯がもつ透明感や光沢が失われ、白く濁った見かけになります。
触ってみても凹凸はなく、健全な歯と同じようにツルツルしていますし、しみたり、痛んだりするような自覚症状もまずありません。
ですから、虫歯の一種とは思えませんが、これも立派な虫歯です。
歯の表面の白濁は、生まれつきのエナメル質の形成不全などが原因のこともあります。
しかし、今までなかったところにいつの間にか白く濁った斑点ができたというなら要注意です。初期虫歯の可能性が大です。
初期虫歯が進行すると、やがて皆さんおなじみの「穴の開いた虫歯」になります。
ちなみに歯科では、穴の開いた虫歯を含め、虫歯全般を「う蝕」、虫歯によってできた穴を「う窩」(窩は穴、くぼみの意)と言い分けています。
穴の開いていない初期虫歯の段階なら、早期に発見して対処できれば、見かけが元通りになる可能性もあります。
ですが、その為には患者さんのご協力が欠かせません。
では、そんな初期虫歯はどうやって見つけるのでしょうか?
見てわかる「穴の開いた虫歯」と違い、虫歯のできはじめである初期虫歯を見つけるのは一筋縄ではいきません。
初期虫歯に特有の「表面の白濁」は、プラークがその上に付着していると見えませんし、唾液に濡れていると光の反射のせいでははっきりとわかりません。
ですから、①しっかりプラークを除去して、②エアーを吹きつけて歯の表面の唾液を乾燥させてから、③観察します。
特に奥歯の溝が黒っぽい場合、歯の着色と混同しないように、④過去のメンテナンスや検診で撮影したお口の中の写真と見比べることも必要です。
着色は虫歯ではありませんので、誤って削ってしまってはいたずらに歯の寿命を縮めることになります。比較できるように、日ごろからメンテナンスや検診に通って、お口の中の写真を撮らせていただければと思います。
また、歯の表面、奥歯の溝だけではなく、目で見えない歯と歯の間に虫歯もできますので、初期虫歯を早期に見つけるには、⑤レントゲン撮影も必須となります。
よく「何も異常がないのに歯医者でレントゲンを撮られた」なんて声を聞きますが、歯科でレントゲン撮影をすすめるのは、「何も異常がないかを確かめる」ためです。
初期虫歯に患者さんご自身で気がつくのは、とても難しいです。
歯科の精査で見つかるケースが多いのが初期虫歯の怖い所です。
初期虫歯はどんなふうにできるのでしょうか?
「物が溶けていく」と言ったとき、太陽の下に置かれた氷のように、外気と触れる表面からじわじわと溶けていくイメージがあります。
ですが、「歯が溶ける」と言われる虫歯の溶け方は、そうした一般的なイメージとは異なります。
初期虫歯のできる仕組みも含めてご紹介いたします。
- プラークの付着
飲食後、歯の表面に細菌のかたまりであるプラークが付着します。
プラーク内の細菌が糖を分解して酸をつくり、つくられた酸がプラーク内に充満します。
- 歯の成分が溶けだす
酸性になったプラークと接した歯の表面から、歯のエナメル質を構成する結晶の成分が唾液中に溶け出します。これを脱灰と言います。
このとき、脱灰と並行して、唾液の作用により、溶け出した成分が歯に戻っていく「再石灰化」と言われる歯の修復も繰り返し起こります。
- 初期虫歯の誕生
脱灰のスピードが再石灰化のスピードを上回る期間が長く続くと、歯の成分がどんどん抜けていき、結晶内に気泡のようにスカスカの部分ができてしまします。
これが「初期虫歯」の誕生です。
- 穴の開いた虫歯
そして、脱灰が再石灰化のスピードを上回る期間がさらに続くと、歯の結晶の中身が完全にスカスカになり、やがて表面が崩れ落ちて穴の開いた虫歯になります。
進行すると、歯の内部の象牙質や神経へ虫歯がおよび、痛みを感じるようになります。
では、初期虫歯になってしまったらどうしたら良いのでしょうか?
穴の開いた虫歯は、穴をふさぐには詰め物を詰めるしかありません。
しかし、初期虫歯は「あるもの」を利用すれば、元の健全な歯の状態に戻せる可能性があります。
そのあるものとは、歯磨き剤でお馴染みの「フッ素」です。
フッ素には、唾液中に存在すると再石灰化のスピードを促進する働きがあります。
虫歯は脱灰のスピードが再石灰化のスピードを上回ることが原因ですので、フッ素で再石灰化のスピードが上がると、歯の結晶が修復されていきます。
その際には、脱灰の原因となるプラークの除去、つまり歯磨きの仕方やそもそもの食生活についても、見直していただくことが大切です。
初期虫歯の予防方法
穴の開いた虫歯は初期虫歯の延長線上にありますので、初期虫歯の予防に必要なことは、虫歯の予防と同じです。
- 歯磨きの見直し
歯磨きは、虫歯の原因となるプラークを落とすだけではなく、歯磨き剤に含まれるフッ素を歯に供給する機会でもあります。
効果的な予防のためには、朝と昼と寝る前の1日3回は歯磨きしていただきたいです。
虫歯ができてしまった方は、ご自身の歯磨きの仕方を歯科医院で確認してもらいましょう。
- 食生活の見直し
ちびちび食べ、ちびちび飲みは、お口の中に甘い物が長時間ひっきりなしに存在することになるのでよくありません。
虫歯には、甘い物を食べる「量」より「時間」や「回数」が影響します。
- フッ素配合歯磨き剤の使用
使う際に大切なのは、「すすぎは少なくする」ということです。
すすぎが多いと、せっかくのフッ素がお口から洗い流されてしまいます。
歯磨き剤は、高濃度フッ素(1450ppm)を配合したものを選びましょう。
- メンテナンス
虫歯のできはじめを見つけるのは、歯科医院でしかできません。
定期健診を是非、続けていきましょう。
もし初期虫歯が見つかったら、穴の開いた虫歯に成長しないように、一緒にケアを頑張りましょう。しっかりとサポートさせていただきます!
いかがでしたでしょうか?
今回は、「虫歯のいろは」の第一弾「初期虫歯」についてご紹介させていただきました。
初期虫歯の予防は、ご自身の毎日の歯磨きと正しい食生活がとても重要です。
そして、初期虫歯になってしまっても諦めずに歯科医院と協力して一緒に穴の開いた虫歯に成長させないようにケアを頑張っていきましょう!
メンテンナスにご来院していただかないと初期虫歯の発見やケアなどが出来かねますので定期的なメンテナンスの受診をお願いいたします。