タバコはお口の健康にも影響する?!
2024年8月1日
タバコを吸うとリラックスしたり、ストレス解消になるのでついついタバコがやめられない方多くありませんか?
タバコの全身への害はよく知られてはいますが、お口への害はあまり知られてはいません。
今回は、タバコとお口の健康の関係についてお話させていただきます。
喫煙は歯や歯茎の着色などお口に様々な影響を与える
お口は、タバコが最初に通過する場所のため、様々な影響をじかに受けてしまいます。
タバコにより、歯茎にも着色が起こります。
加えて、口腔・咽頭がんの発生率が3倍になるほか、味覚が鈍くなったり、口臭を悪化させたりもします。
また、1980年代より喫煙者と非喫煙者で歯周病の進行具合に差があることが注目され始め、現在では喫煙は歯周病の大きなリスク要因であることもわかっています。
喫煙者と非喫煙者は歯茎にも違いがでる
喫煙者と非喫煙者の違いは歯茎にも現れます。
喫煙者の歯茎は暗紫色、ゴツゴツと硬く乾燥して見えます。
喫煙者の歯茎が暗紫色になるのは、ニコチンの毛細血管収縮作用と一酸化炭素が原因です。
ニコチンの血管収縮作用により、組織の血行は悪くなります。
また、一酸化炭素がヘモグロビンと結合することで血液の色自体もどす黒くなります。
このような理由で、歯茎は健康なピンク色ではなく、暗紫色になります。
禁煙による歯茎の変化
禁煙と歯のメンテナンスを行なうと時間をかけて健全な歯茎に戻っていきます。
禁煙直後には、一時的に歯茎の出血が増えてしまう事があります。
しかし、これは正常な反応です。
禁煙するとニコチンも血管収縮作用がなくなるため、歯茎の出血が増えるのです。
正常な炎症反応が戻る事により赤身や腫れなども増すかもしれませんが、どちらも一時的なものです。
禁煙と並行して、プラークコントロールがきちんと出来ていれば治っていきます。
禁煙を続けることで、歯茎は健康なピンク色になり、みずみずしさを取り戻します。
メラニン色素も薄くなっていきます。
喫煙は歯周病の大きなリスクとなる
喫煙は歯周病のもっとも大きなリスクの要因のひとつです。
非喫煙者と比較すると、喫煙者の歯周病の罹患リスクは2.7倍となり、歯の喪失は10年早まると言われています。
喫煙の歯周病への影響は、【かかりやすい】【気が付きにくい】【治りにくい】の3つがあります。
まず、体の本来の免疫機能が喫煙により妨げられるため、歯周病にかかりやすくなります。
また、ニコチンの血管収縮作用により炎症症状が隠され、歯周病が進行しても出血などの自覚症状が出にくくなります。そのために、発見が遅れてしまい、気づいたら重度の歯周病になっていたというこがあります。歯茎の腫れや赤みがそれほど目立たないのに、歯周組織の破壊が進んでいることもあります。
そして、いざ治療を始めても、喫煙者の歯茎は硬くて沈着物の除去が難しく、歯周組織の修復も阻害されているため、思うように治療効果が上がらないのです。
禁煙後の身体に起こる変化
禁煙することで早くて数日から起こるよい変化があります。
歯茎の血流量に起こる変化
禁煙をすると歯茎への血流量も改善し、禁煙5日ほどで非喫煙者と同じくらいに回復します。血液は酸素や栄養、細菌と戦う免疫細胞を運んでくれます。
ですので、血流が回復すると傷の治りがよくなったり、再感染の防止にもなります。
歯科治療では、歯周外科やインプラント治療の前には必ず喫煙の有無を確認させていただいています。
タバコがお口の健康にも影響する事は理解したが、すぐにはタバコが辞められない!
ここまで読んでいただき、タバコとお口の健康に影響する事はご理解いただけたと思いますが、「じゃあ、今から禁煙するぞ」と決意しても、中々やめれないこと、禁煙しても続かない事もあります。
タバコがやめられないのは、その人の意思の問題ではなく、ニコチンの持つ強い依存性が禁煙の邪魔をしています。
また、脳が幸せを感じる仕組みも関係しています。
タバコはリラックスやストレス解消になる!?
私達の脳には、ほっとする、落ち着く、安らぐなどの気持ちを生み出している神経が存在します。良い情報、たとえば「美味しいごはんを食べた」「一仕事終わった」という刺激が脳に伝わると、アセチルコリンという物質が出てきます。
アセチルコリンは脳内の神経に結合します。
すると、神経が興奮し、電気が流れます。
そうなると今度は脳の前方にある部位からドパミンという物質が分泌され、それが幸福感を生み出します。
アセチルコリンは人の身体の中にある物質ですが、実は似た物質があります。
それが植物のタバコがつくるニコチンです。
タバコを吸って5~10秒もすると、肺から脳へ血流に乗ってニコチンがやってきて、アセチルコリンの代わりにニコチンが神経と結合し、良い事がなくても神経が興奮してドパミンを放出し、幸福感を生み出してしまいます。
そうです。脳が錯覚してしまっている状態です。
タバコを吸うようになり、ニコチンがいつもやってくるようになると、脳の神経がアセチルコリンを受け取る仕事をさぼるようになっていきます。
そうなると、本来ならストレスから解放されているはずの時でも、「タバコを吸わないと落ち着かない、安らがない」ようになってしまいます。
タバコを吸えばリラックスする、ストレス解消になるというのは嘘ではありませんが、裏を返せば「タバコを吸わなければ、リラックスしにくい、落ち着けない」脳になってしまっています。
ニコチンの持つ強い依存性・・・
タバコを吸うと、血中のニコチン濃度が一気に上昇します。
しかし、30分~1時間もするとニコチンは肝臓で代謝されます。
血中のニコチン濃度が低下すると、イライラ、不安、脱力など不快な離脱症状が出てくるので、これを解消するためにタバコを吸います。
この悪循環が繰り返され、依存が強くなっていきます。
このニコチンの依存性はヘロインやコカイン以上で、やめにくさもそれに匹敵すると言われています。
ニコチンの依存性は根深いため、「どうしてもやめられない」という方が多いでしょう。
しかし、禁煙が成功したなら、口腔疾患リスクは大幅に減り、全身の健康リスクも低下します。
更には、自分以外の家族や友人、職場の同僚などへ、不特定多数の人の受動喫煙のリスクもなくなります。
自分一人の力では禁煙する事は難しいこともあります。
家族や周りのサポートもとても大切です。
専門外来を受診することも一つの手でもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「タバコはお口の健康にも影響するのか」についてご紹介させていただきました。
タバコとお口の健康についてご理解いただけましたでしょうか?
今タバコを吸っている方は是非、今日からまず1本づつでも量を減らして、最終的には禁煙を目指してみてください。
そして、自分は吸っていないけどご家族が吸っていて中々タバコがやめれないという方がいらっしゃいましたら是非、サポートしてあげてください。
そして、一緒に健康なお口を取り戻していきましょう!