歯を失う原因No1!歯周病について知りましょう!前編
2024年7月1日
今回は歯を失う原因No1の【歯周病】はご存じでしょうか?
何年かぶりに歯医者に行くと、「この歯は歯周病になっています」と言われた事はありませんか?
毎日、歯磨きしているし、今まで何ともなかったのに何故?と疑問に思われていませんか。
今回は、「何故歯周病になってしまったか」について詳しくご紹介させていただきます。
*歯周病はバランスの問題です
歯周病は、極端に言うと、「プラーク(歯垢)の攻撃力」と「歯茎の抵抗力」の力関係で発症するかどうかが決まります。
プラークの攻撃力が高まり、歯茎の抵抗力のバランスが崩れた時に発症します。
では、天秤に例えてみましょう。
天秤の左にある「歯茎の抵抗力」の皿には、もともと沢山のコインが乗っているのですが、不十分な歯磨き、加齢や肥満・病気・疲労やストレスなどによる免疫力の低下、喫煙などによって、コインが減っていきます。
一方、右にある「プラークの攻撃力」の皿には、長期間みがき残されたプラークの成熟、歯茎からの出血による歯周病菌の増加、喫煙によるプラークの効果などで、コインが増えていきます。
その結果、「プラークの攻撃力」の皿のほうのコインが多くなったとき、天秤が傾き、歯周病が発生します。
*長く残っているプラークほど攻撃力を増す
お口の中に住んでいる細菌が集まって、ヌルヌルとした粘着性の塊になったのがプラークです。
プラークはお口の中に長く存在するほど成熟し、攻撃力(病原性)が高まります。
長期間放置されたプラークはやがて歯石になります。
歯石はサンゴ礁のようにデコボコしており、さらにプラークが付着しやすいです。
歯石になってしまうと、歯磨きでは取り除けなくなってしまいます。
しかし、「毎日歯磨きをしているのに、なんで歯周病になってしまったのか?」と疑問に思われる方も多いと思います。
歯磨きを毎日していても、歯磨きの仕方に問題があるのではないでしょうか?
歯ブラシの毛先が上手くプラークに当たらずに、プラークが残ってしまったかもしれません。
そうしたプラークを落とすためには、歯科医院であなたの歯並びにあった歯ブラシの動かし方、フロスや歯冠ブラシの使い方を教えてもらうことと、自分では取り切れないプラークを、定期的に除去する事が必要になります。
*歯周病菌は血液が好物です
歯周病菌であるPg菌・Tf菌・Tb菌は、血液が大好物です。
歯茎から出た血液中のタンパク質と鉄(ヘム鉄)を栄養にして、増殖して強くなります。
ですので、歯茎から血が出た時は、出血がなくなるように、歯に付着したプラークを落とさなければなりません。
プラーク中に歯周病菌が多いと、それまで人の体に悪さをしてこなかった日和見菌たちも悪さをするようになります。
その結果、プラークの攻撃力が高まります。
「歯磨きをしていたら血がでた!強く磨きすぎかな?」とこれ以上磨かないでおこうと歯磨きを控える方も多いと思います。しかし、それでは、歯周病菌の大好物を与えてしまう事になってしまいます。
歯磨きをしていて血がでるというのは、その場所が歯周病になっている又は、なりかけているサインです。
むしろ、血がでる場所こそ、しっかり磨かないといけません。
*加齢や肥満、疲労・ストレスも関係しています
加齢(老化)や肥満による体の抵抗力の衰えは、「歯茎の抵抗力」にも影響します。
細胞が老化すると、歯周病菌が持つ毒素の刺激に対する抵抗力も、刺激で生じた傷に対する修復力も低下します。
慢性的な疲労やストレスで体の抵抗力が落ちると「歯茎の抵抗力」も下がっていきます。
若いときは、多少磨き残しがあっても問題は起きませんが、歳を重ねるにつれ、若い時と同じレベルのセルフケアでは、「プラークの攻撃力」に「歯茎の抵抗力」が負けてしまうことがあります。
歯科医院には、痛みや異常のないときから定期的に通い、歯周病の兆候がないか診てもらうのがとても重要です。
そして、今のお口や体調にあったセルフケアの仕方を教えてもらいましょう!
*特に糖尿病の方は要注意!糖尿病は歯周病への影響が大きいです!!
病気は体の抵抗力を低下させますが、なかでも、糖尿病は歯周病と関連が深い病気です。
糖尿病は免疫力を低下させて感染を起こしやすくします。
歯周病は細菌が原因ですので、糖尿病の方は、歯周病になりやすく、悪化しやすいのです。
しかし、いいニュースもあります。
「歯周病が改善すると、糖尿病も改善する」という事です。
実際、歯周病を治療すると、糖尿病の指標であるHbA1cの数値が改善することはよく知られています。
歯周病のQ&A
Q:歯周病になりやすい人はいますか?
A:お口の中の悪玉菌(歯周病菌等)が多い程、プラークの攻撃力も上がります。
歯磨きをあまりしていないのに、虫歯や歯周病にもなっていない方が稀にいます。
これは、お口の中の悪玉菌が全然いない方です。しかし、この稀なケースは全体に1割ほどです。
日本人の4割はお口に沢山の悪玉菌がいます。そして5割はちょい悪くらいの悪玉菌がいます。
なので、歯周病になりやすい人はお口の中の悪玉菌が多ければ多いほど、歯周病になりやすいのです。
Q:歯周病菌はどこからくるの?
A:歯周病菌は、生まれたての赤ちゃんのお口には存在しません。
唾液を介して、人から人へとうつっていきます。
食器・食具の共有や自箸、キスによる唾液交換などが、その例ですね。
しかし、歯周病菌がお口に入ってこないようにする感染を防ぐのは至難の業です。
それよりも、歯周病にならないように歯磨きや歯科受診を欠かさないことが大切です。
Q:若い人は歯周病になりにくいですか?
A:子供はふつう、歯周病にはなりません。18歳未満のお口から歯周病菌であるPg菌がほとんど検出されません。
また、20代の頃は体力も免疫力もあるので、歯茎の抵抗力が強いです。
その為、歯周病になりにくいです。(一部、若年者に急激に進む歯周病は除きます)
多少、歯茎から血がでても(歯肉炎)、顎の骨はそんなに減りません。
しかし、30代以降になると、重度の歯周病の人が増えていきます。
米国の調査では、「36歳」が重度歯周病の発症のピークとなっています。
Q:タバコは歯周病と関係ありますか?
生活習慣の中でも、歯周病の非常に大きいリスク要因となるのが喫煙です。
タバコは、「歯茎の抵抗力」を減らして、「プラークの攻撃力」を増やします。
「タバコで歯周病が10年速く進行する」というデータもあります。
加熱式タバコにも、ニコチンなどの化学物質は含まれます。
タバコの煙に隠れている歯周病の進行を速める原因とは・・・・
*血管を収縮させる
タバコの煙に含まれるニコチンは、血管をキュッと収縮させます。
そうすると、血液とともにやってくるはずの栄養分と酸素が歯茎に届かなくなります。
*免疫細胞を弱体化
細菌を食べてくれる白血球などの免疫細胞の働きも、タバコの煙に含まれる化学物質の作用で弱まってしまいます。
*酸素の運搬を妨げる
赤血球は通常、その中に無数に存在するヘモグロビンに酸素をくっつけて運びます。
しかし、タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、酸素を剥がしてヘモグロビンに強く付着してしまいます。
*歯周病菌の大好物
タバコの煙に含まれる化学物質は、歯周病菌をはじめとした悪玉菌の大好物です。
これらの病原性を高め、プラークの攻撃力も高めてしまいます。
*プラークを硬くする
タバコの煙に含まれる化学物質は、プラークを硬く歯に付着させます。
その為、歯磨きをしても落ちにくくなります。
いかがでしたでしょうか?
今回は歯を失う原因No,1の歯周病について詳しくご紹介をさせていただきました。
「歯茎の抵抗力」と「プラークの攻撃力」のバランスやプラークを毎日しっかり除去する大切さ、生活習慣や糖尿病と歯周病との関係性など、ご理解いただけたでしょうか?
では、歯周病になってしまったら、どのように治療をしていくのでしょうか?
次回は歯周病治療について、詳しくご紹介させていただきます。