インプラント治療について知りましょう!パート③
2024年3月5日
前回はインプラント治療の流れについてお話させて頂きました。
まだ、読まれてない方は是非、そちらも参考に読んでみてくださいね。
長期間のインプラント治療がやっと終わり、日常生活も問題なく噛めるようになり美味しく食事も出来て快適に過ごされているかと思います。
しかし、ここで油断をしてはいけません。
気をつけなければ思わぬトラブルが起こってしまうかもしれません・・・
インプラント治療終了後に起こり得るトラブルについて、トラブルの原因や対応方法とこから先、長くインプラントをいい状態で使用する為にできる予防方法等をご紹介させて頂きますね。
インプラント治療終了後に起こるトラブルは主に『細菌』と『噛む力』が原因です。
それぞれについて、詳しくご紹介させて頂きますね。
インプラントも歯周病になる?
長持ちの大敵の一つ目は、『細菌』です。
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病にはなってしまいます。
では、インプラントの歯周病はどのようなものでしょうか?
天然歯の歯周病と比較しながら説明させて頂きますね。
天然歯に起こる歯周病とインプラントに起こる歯周病の原因は、どちらもプラーク(細菌のかたまり)です。
歯周病は、歯の根元まわりに付着したプラークが、まず歯茎を炎症させて腫れや出血を引き起こし、いわゆる「歯肉炎」になります。
歯肉炎が悪化すると、顎の骨が溶けてなくなる(実際は身体の防御反応で骨が吸収されている)「歯周炎」=歯周病となります。
インプラントの歯周病も、進行の仕方は似ています。
インプラントに付着したプラークが、その周りの歯茎を炎症させて腫れや出血を起こします。専門的にはこの様態を「インプラント周囲粘膜炎」といいます。
インプラント周囲粘膜炎が悪化すると、顎の骨にも炎症が及ぶインプラントの歯周病=「インプラント周囲炎」となります。
周囲炎が進むと、骨が失われてインプラントはグラグラしていき最後には抜けてしまいます。
顎の骨が失われる点は共通していますが、天然歯に起こる歯周病では、実は炎症は骨に及んでいません。
炎症と骨の間には常に歯茎があり、細菌が骨の内部に入り込まないように防波堤となっているからです。
しかし、インプラント周囲炎では骨の内部に細菌が入り込み炎症が起きています。
いわば骨炎や骨髄炎と同じです。
ここまで読んでいただくと怖く感じられかと思いますが、インプラント周囲炎にならない為にできる予防法があります。
それは『セルフケア』と『メンテンナンス(定期健診+クリーニング)』です。
そうです、天然歯と同じく毎日のセルフケアと歯科医院でのプロのメンテナンスを受けて頂き、歯周病の最大の敵『プラーク』を取り除く事がインプラント周囲炎の予防策となります。
メンテナンスでは、インプラントとその周りの歯茎や顎の骨の状態を複数の検査で調べます。
なかでも重要視されるのが、インプラントと歯茎の間に器具を差し込んだ時に出血するかどうかの検査です。
出血したら、インプラントの根元に付着した細菌が、歯茎で炎症を起こしています。
炎症は歯茎だけなのか、顎の骨にまで及んでいるのかをレントゲンで更に精査します。
周囲炎やその前の段階のインプラント周囲粘膜炎になっていることがわかれば、日々のセルフケアを見直していただく必要があります。
セルフケアを怠っている状態で治療をしても、細菌は減らず炎症も引きません。
改善されたら、セルフケアの歯ブラシでは届かない、歯茎の中のプラークや歯石を専用の器具で除去します。
周囲炎の場合は、これにくわえて、細菌に汚染された歯茎の組織や顎の骨も除去が必要になります。
細菌の温床がなくなれば、顎の骨がインプラントに結合する見込みが高まります。
周囲粘膜炎の段階で発見できれば元に戻せますし、顎の骨のダメージが少ない状態ほどインプラントを失わずにすむ可能性が高まります。
歯周病と同じく、痛みや違和感を感じてからでは進行している事が多いです。
ですので、日々のセルフケアと定期メンテナンスの受診を欠かさないようお願いしています。
インプラントのセルフケアをレベルアップしましょう!
*歯ブラシをしっかり当てましょう
インプラントと歯茎の間に45度に歯ブラシを当てて、優しく小刻みに1本1本丁寧に磨いてください。
*歯間ブラシを使用しましょう
鏡を見ながら、歯と歯の間に歯間ブラシを下から上に傾けて差し込んで下さい。
(※上顎の場合は上から下に傾けて差し込んでください。)
歯間ブラシを完全に貫通させていただき、毛先が手前のインプラントの歯茎周りに触れた状態で、優しく小刻みに(3~4mm幅)に10回動かします。
次に、同じように毛先が奥のインプラントの歯茎に触れる状態で優しく小刻みに(3~4mm幅)に10回動かします。
この時にワイヤーを直接、歯や歯茎に当てないように注意してください。
*歯間ブラシが入らない時はデンタルフロスを使用しましょう
上部構造に沿わせて、そっと動かして汚れをとっていきます。
詳しくは、当院の歯科衛生士からお手入れ方法はご説明させて頂きますね。
噛む力がインプラントの持ちに影響がある?
長持ちの大敵の二つ目は、『過剰な噛む力』です。
インプラントを長持ちさせるには、過剰な噛む力への配慮が必要になります。
「噛む力」と言っても、一時的にガリッと強く噛んでしまう力よりも、歯ぎしりやくいしばりといった無意識に生じる継続的な強い力が問題となります。
天然歯とインプラントの違いでご紹介した、インプラントと顎の骨の間には噛む力を吸収・分散させる歯根膜がありません。
その為、過剰な力が生じた場合、インプラントや骨にダイレクトに負担がかかります。
その結果
- ・人工歯部分(上部構造)が欠ける、割れてしまう
- ・連結パーツ(アバットメントやネジ)がゆるむ、ゆがんでしまう
- ・人工歯根(インプラント体)に亀裂や破折、インプラント体と骨が剥離して、抜けてしまう事が稀にあります。
くわえてインプラント周囲炎も、歯ぎしりなどにより悪化する恐れがあります。
これは、ご自身の天然歯の歯周病にも起こり得る事です。
歯ぎしりやくいしばりは無意識の癖ですので、自覚していない事がほとんどです。
「歯ぎしりや食いしばり」についてもご紹介しているコラムもありますので、そちらも是非、参考にしてみてくださいね。
歯科医院では、かみ合わせやインプラントの状態を調べる事で、絶えずそうした兆候がないかを定期健診で診ています。
兆候が見つかった場合は、かみ合わせの調整やナイトガード(就寝時につけるマウスピース)などで力の緩和を図ります。(下記画像がナイトガードです)
では、上部構造の欠けや連結パーツのゆるみなど、トラブルが起こったらどうなるのでしょうか?
・人工歯部分(上部構造)が欠ける、割れてしまう
→上部構造を外して、修理もしくは作り変えを行います。
・連結パーツ(アバットメントやネジ)がゆるむ、ゆがんでしまう
→上部構造と連結パーツを外して、修理もしくはネジ交換など行います。
・人工歯根(インプラント体)に亀裂や破折、インプラント体と骨が剥離して、抜けてしまう
→インプラント体の撤去を行います。
骨の状態により、再埋入OPEを行う場合もあります。
基本的には上記のような流れで再度、インプラントで噛める状態へと治療を行いますが、者
様の口腔内の状況により異なる場合もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
インプラントをトラブルなく、長持ちさせる為に大切な事をお話させていただきました。
インプラントが完成し、「噛めるようになったから、インプラント治療は終わり!」ではあ
りません。
長く良い状態でインプラントを使用してもらえるように患者様ご自身での日々のセルフケ
アと歯科医院で定期的なメンテナンスがとても重要です。
「痛みがないから」「違和感もないから」とだんだんと歯科医院へ足が向かなくなる方も、
残念ながら少なくないのです。
患者様が異常を感じてから歯科医院へ来ていただいても、対応が難しい事が多くなり、症状
によりインプラント体を抜かないといけなくなるケースもあります。
そして、インプラントだけではなく、日々のセルフケアとメンテナンスはご自身の天然歯に
とっても重要な事です。