全身疾患と歯科との関係について 後編
2023年11月1日
全身疾患と歯科との関係性
前編に引き続き、全身疾患と歯科との関係性についてお話させて頂きます。
今回は骨粗しょう症と糖尿病についてです。
骨粗しょう症と糖尿病は歯周病とも関係してくるので併せてお話させて頂きますね。
まだ前編を読まれてない方は是非、前編もご覧になって下さいね。
骨粗しょう症とお薬について
Q:骨粗しょう症とはどんな病気ですか?
A:骨は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が繰り返されることで、絶えず新しく骨が生まれ変わっていきます。
通常は骨吸収と骨形成のバランスが釣り合っているのですが、ホルモンバランスの影響で釣り合いが崩れてしまい、骨吸収が過多になり骨量が減っていき、骨の内部がスカスカになってしまいます。
その為、骨の密度が低下し骨がもろくなり、骨折しやすくなります。
Q:お薬は何の為に服用が必要ですか?
A:骨粗しょう症のお薬にはいくつか種類があります。
それぞれ作用が異なり、「骨が壊れるのを抑える薬」「骨がつくられるのを促す薬」「骨への栄養を補う薬」があります。
骨吸収を抑制する目的として【骨吸収抑制薬】があります。
骨代謝のバランスが崩れ、骨吸収のほうが骨形成よりも増えてしまっているので骨吸収を抑制して、骨量が減らないようにしなくてはなりません。
骨吸収抑制薬にはいくつか種類はありますが【ビスフォスフォネート(BP)】がよく知られています。
飲み薬の他に注射薬や点滴などもあります。
Q:歯科治療とどう関係しますか?
A:骨粗しょう症は、体の骨だけではなく顎の骨にも影響します。
骨粗しょう症のお薬(ビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤)を使用している方は、骨代謝を人為的に変えるお薬の影響で、抜歯やインプラントなど大きな治療を受けた後に、顎の骨の壊死(薬剤関連顎骨壊死)がごくまれに起こる事があります。
顎骨壊死を発症すると、痛みや歯茎の腫れが生じるほか、顎の骨が歯茎から露出したり、顔の皮膚から膿が出てきたりすることもあります。
頻度は多くはないものの、一度発症すると治りにくく、非常につらい病気です。
骨粗しょう症の治療をしながら薬剤関連顎骨壊死を防ぐ為に医科と歯科の連携が大切になります。
歯科医院からのお願い
*万一の顎骨壊死のリスクを避ける為、骨粗しょう症のお薬や注射等使用している方は必ず教えて下さい。
*お薬の影響は数か月~数年残る為、現在使用していなくても服用履歴も教えて下さい。
*かかりつけ医を教えて下さい。
外科処置が必要な場合はかかりつけ医の主治医と相談して決めていきます。患者様の骨粗しょう症の症状や、お薬をどれくらいの期間使用しているかで、治療を受けられるかどうかか変わります。
薬剤関連顎骨壊死を起こさせないために
元々口腔内は、骨壊死を起こしやすい環境です。
そもそも歯は歯槽骨という骨に刺さっている状態です。
皮膚と違い歯茎は薄く、骨が露出しやすくなっています。
そして、口腔内には多数の常在菌がいます。
清潔にしていないと、虫歯や歯周病になってしまいます。
骨密度が低いと歯周病による歯槽骨の吸収が進みやすくなります。
進行する事により細菌感染が骨にまで及び、薬の影響もあって顎骨壊死が発症すると考えられています。
また、合っていない入れ歯を持続的に使用する事で傷ができやすく傷によって骨が露出しやすくなります。
なので、「抜歯などの外科処置で顎骨壊死が起こる」ではなく、「抜歯を必要とするような歯周病や根尖病巣などの存在が顎骨壊死につながる」と現在は考えられています。
上記の内容を踏まえて
① 虫歯、歯周病、歯の根の先の病変、合っていない入れ歯などきちんと治療を受けて頂き、感染源や傷ができない良好な口腔内環境をつくりましょう!
② 虫歯、歯周病の予防で一番大切な事は毎日のご自身による歯磨きです。
適切なケアをする事で予防になります。
歯科医院にて一人一人にあったブラッシング指導も受ける事ができます!
③ ご自宅のケアだけでは落としきれない汚れはかかりつけ医の歯科医院にてプロの力をかりましょう。
定期的なプロケアで歯茎の中の汚れや歯石などを除去し、虫歯や歯周病になりにくい口腔内環境に整えましょう!
糖尿病とお薬について
Q:糖尿病とはどんな病気ですか?
A:糖尿病は「血のなかに糖が増えすぎる」病気です。
血液中の糖(ぶどう糖)は、普通はすい臓から分泌されるインスリンというホルモンが分解してくれるのですが、これが上手くいかなくなってしまいます。
生まれつきインスリンの分泌量が少ない1型糖尿病・正常にインスリンは分泌されているがその作用が十分に発揮されにくくなっている2型糖尿病があります。
血液は身体中に酸素や栄養、免疫細胞を運んでいます。
血糖が長期間高い状態になっていると血管は傷んできます。
血管が傷んで固くなると弾力がなくなり、血液の運搬が上手くいかなくなります。
この状態が続くと、やがては、目、神経、腎臓、心臓、脳などに様々な機能不全(合併症)が起こります。
糖尿病はこの合併症を引き起こすのが一番怖いです。
Q:お薬は何の為に服用が必要ですか?
A:糖尿病のお薬には、インスリン注射と飲み薬があります。
1型糖尿病の方は、体の外から常にインスリンを補給する必要があり、その為にインスリン注射をします。
2型糖尿病の方は、おおもとの原因として生活習慣があげられます。ですから、まずは食事制限や運動が治療の第一選択となり、それでも改善されない場合は血糖降下薬の服用やインスリン注射をします。
Q:歯科治療とどう関係しますか?
A:糖尿病はいわば「血管の障害」です。
血流が悪くなり、栄養や免疫細胞が届きにくくなるために、感染への抵抗力が弱まり傷の治りが悪くなります。
そのせいで細菌感染を起こしやすく、炎症もひどくなりがちです。
歯の根にできた病変から顎の骨に炎症が広がって顎骨炎になったり、インプラント周囲炎から首回りに炎症が広がる事もあります。
抜歯の後やインプラントを入れた後も傷が開きやすく、感染を起こしやすいです。
血糖値の高さ以外にも、血糖値の乱高下も起こりやすくなります。
通常血糖値は空腹時でもおよそ100となりますが、糖尿病のかたは200近く上がる一方で、歯科治療中に、時間とともに50以下まで落ち込むこともあります。
血糖の低下は中枢神経系に作用し、思考力が低下。さらには自律神経も働かなくなると意識を失います。
この「低血糖性昏睡」は非常に危険な状態です。
もし、今までに同じような症状が起きた事がある場合も是非、問診の際に教えて下さい。
そして、糖尿病の方は歯周病にかかりやすいことがわかっています。
糖尿病によって体の免疫力が弱まり、歯周病菌に抵抗する力も弱くなってしまいます。
ですから、歯周病にかかりやすく、治りにくく、重症になりやすいです。
また、治療が終わった後も再発しやすいので油断はできません。
歯科医院からのお願い
*万一のトラブルを避ける為に、糖尿病の方、お薬を服用・インスリン注射をされている方は必ず教えて下さい。
*かかりつけ医を教えて下さい。
*現在の糖尿病の数位(ヘモグロビンA1c)を教えて下さい。
*食事は抜かずにご来院ください。
外科処置が必要な場合はかかりつけ医の主治医と相談して決めていきます。
状態により先に医科にて血糖のコントロールをしていただく必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
前編・後編にて5つの全身疾患と歯科について大切な事をお伝えさせて頂きました。
意外に知られていない歯科治療との関係を知っていただけたかと思います。
安心安全な治療の為に、正確な問診にご協力お願い致します。
、お体の状態に変化がある際はその都度教えて下さいね。