歯周病とからだの病気
2025年7月2日
目次
歯周病とからだの病気
城東区にある歯科・歯医者のしぎの歯科です。
お口の病気である【歯周病】。実は、全身の健康にも影響することをご存じでしょうか?
歯周病はただのお口の病気ではありません。
お口の病気である【歯周病】が、からだの病気に関係するという話は、皆さんもテレビやネットなどで耳にしたことがあるでしょう。
歯周病が全身の健康に及ぼす影響は、長年、国内外で研究されてきました。
今回は、特に関連性が強いと考えられている病気を取り上げ、進行した歯周病が発症や悪化にどのように関わっているかを、現在想定されているパターンをご紹介させていただきます。
それぞれの病気によって、歯周病菌の果たす役割は異なります。歯周病菌自体が直接的に悪さをすることもあれば、歯周病菌が起こす炎症が引き金となって、全身の病気に拡大することもあります。
本日知っていただいた知識を、皆さんが歯周病の治療を受けたり、予防に取り組むモチベーションに繋げていただけたら幸いです。
歯周病と特に関連性の高い病気とは・・・
歯周病は多数のからだの病気との関連性が長年研究されています。特に関連性が高いと現在考えられているのは、①動脈硬化と、それにともなう脳梗塞・心筋梗塞 ②糖尿病 ③誤嚥性肺炎 ④早産・低体重児出産 です。
では、それぞれについてご紹介させていただきます。
歯周病菌の死骸が脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす!?
脳の血管が詰まって起こる脳梗塞。心臓の血管が詰まって起こる心筋梗塞。どちらも命取りになりかねないおそろしい病気です。
歯科では、これらの病気と歯周病との関連が昔から研究されていました。
まずは、歯周病とは関係なく、血管が詰まる仕組みをお話しします。
血管が詰まる主な要因である【動脈硬化】は、一般には「血管の内壁にコレステロールが蓄積し、脂肪分が沈着する」ことで起こります。
血管内壁に、おかゆやヨーグルトのような塊(粥腫)ができるのです。
この塊は、厚くなると血管を防ぐだけではなく、破れてしまうこともあります。
そうすると血流に乗って心臓や脳の血管に達して血栓となり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。
これと似たようなことが、進行した歯周病でも起こり得ると考えられています。
まず、炎症を起こした歯茎から入り込んだ多数の歯周病菌が、血流に乗ってからだをめぐります。
彼らは、血管の内壁に入り込んで堆積します。すると、「細菌が集まっている!大変だ!」とマクロファージなどの白血病がやって来て、歯周病菌を食べます。食べたあとは、死骸となってその場に残ります。
これが粥腫のようになって、動脈硬化を起こして血流の流れを阻害する、さらには破れて血流により運ばれ血栓となるというのが現在考えられているパターンです。
実際、動脈硬化を起こした血管の粥腫から歯周病菌の遺伝子が検出され、因果関係が注目されています。
歯周病菌の炎症が糖尿病を悪化させる!?
糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなり、血糖の濃度(血糖値)が慢性的に高いままになってしまう病気です。
インスリンは、骨格筋、脂肪細胞、肝細胞への糖の取り込みを促し、血糖を下げる働きをするほぼ唯一のホルモンです。
糖が細胞に取り込まれず、血糖値の高い状態が何年も続くと、血管が弱って、心臓病や失明、足の切断など、深刻な合併症につながりかねません。
*糖尿病だと歯周病が重症化しやすいため、歯周病も糖尿病の合併症といえます。
インスリンの働きが悪くなる理由は、①すい臓の機能が低下し、十分な量のインスリンが分泌されなくなる、②インスリンは十分な量が分泌されているが、インスリンの糖の取り込みを促す力が弱くなる、の2つです。
歯周病の場合、歯周病菌の出す毒素より歯周ポケットの中で炎症が起きています。
炎症部位には、かただの反応により「炎症性物質」が集まります。
進行した歯周病だと、それが歯茎から体内へ持続的に供給されるせいで、糖をからだの細胞に取り込むインスリンの働きが弱められます。
このため、血糖値が高いままになり、糖尿病が進行しやすくなると考えられています。
歯周病が悪化→炎症が拡大→炎症性物質が体内へ→インスリンの働きを阻害→糖尿病が悪化というように、歯周病菌の存在がドミノ倒し式に波及しているといえます。
おまけに、糖尿病が悪化するとさらに歯周病が悪化するので、放置すると負のスパイラルに陥ってしまいます。
歯周病菌などが誤嚥性肺炎の原因に!?
肺炎は、細菌やウイルスが肺の奥にある「肺胞」に侵入して、炎症を起こすことで発症します。肺胞は酸素を血液中に取り込む一方、二酸化酸素を血液中から排出する役割を担っています。
ですから、肺胞に炎症が起こると、酸素と二酸化炭素の交換が上手くいかなくなり呼吸が困難になります。
高齢者の肺炎の大部分は、「誤嚥性肺炎」と報告されています。
誤嚥性肺炎は、本来は「口→食道→胃」と入るはずの食物や唾液が誤って「口→気管→肺」に入ってしまうことが原因です。
食物や唾液に含まれていた最近やウイルスが肺胞で増殖して、肺炎を起こします。
誤って入ってしまう、つまり誤嚥してしまうのは、舌やお口、のどの筋肉が衰えて、飲みこむ力(嚥下)が弱っているためです。
食事のときに頻繁にむせるというのは、飲み込む力が弱っている兆候ですのでご用心を。
お口の中の細菌の量が多いほど、誤って肺に入り込んだときに誤嚥性肺炎になりやすくなります。
歯周病は、炎症を起こしている歯茎の中で歯周病菌が増殖している状態。
ですから、歯周病を放置しているというのは、沢山の細菌を飼っているのと同じことになります。
「専門家による口腔ケアで高齢者の誤嚥性肺炎が減った」という調査結果もでています。
お口の衛生状態は感染症に直結します。
歯周病になっているのなら速やかに治療する。そして、歯みがきでしっかりとお口の中の細菌の量を減らすことが、誤嚥性肺炎の予防には大切です。
歯周病がお腹の赤ちゃんに影響する!?
タバコやアルコール、膣炎ほか産科期間の感染症、高齢出産などが早産・低体重児出産にかかわることは知られていますが、歯周病も一因になると考えられています。
*早産とは、妊娠37週未満での出産
*低体重児出産とは、出生児の体重が2500g未満の出産
今考えられるケースのうち2つをご紹介いたします。
① まずは歯周病が起こす炎症が悪さをするパターン
通常のお産の場合、母体の変化や胎児の成長によって、妊婦さんの体内ではさまざまな炎症性物質やホルモン、タンパク質分解酵素の濃度が上昇し、出産が促されます。
対して、進行した歯周病の場合、炎症性物質が歯茎から体内に入り込むようになります。炎症性物質の増加はタンパク質分解酵素の分泌を促進し、子宮の収縮を引き起こします。子宮の筋肉が収縮する結果、赤ちゃんが押し出されて予定より早く生まれてしまうのです。
② 歯周病菌が子宮内部の器官に感染するパターン
羊水や羊膜などへの細菌の感染は、早産や胎児の発育不全のリスクとなります。
羊水は本来、無菌的な環境ですが、早産の妊婦さんの羊水や臍帯(へその緒)から歯周病菌が検出されたという報告もあります。
いつか赤ちゃんを!と思っている方は、歯周病の治療を早めに済ませておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、とくに歯周病と関連が高いと考えられている4項目をご紹介させていただきました。当たり前のお話ですが、歯周病になっているなら、まずは速やかに治療を行いましょう。
そして、定期的なメンテナンスに通いながら、毎日の歯ブラシに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間の清掃も行い、お口の清潔を保ちましょう!